【プレジデント】
2023/08/12
「老後に2000万円?」と不安に駆られた高齢者
2019年に老後資金2000万円問題が浮上しました。発端は同年6月に金融庁が公表した、金融審査会市場ワーキング・グループによる報告書「高齢社会における資産形成・管理」です。
この報告書によると、高齢夫婦の無職世帯の平均的な家計収入が20万9198円に対して、支出は26万3718円となっており、毎月5万4520円が不足する計算になります。
この不足額を基に、老後30年間として計算すると、「老後資金には約2000万円が必要」としてマスコミが取り上げ、高齢者の不安を煽ったのです。
ちょうど新型コロナウイルスのパンデミックと重なったこともあり、私がYouTube上で発信するお悩み相談番組『大愚和尚の一問一答』にも、不安に駆られた高齢者からの老後資金についてのお悩みが、数多く寄せられました。
メットライフ生命保険会社のアンケートでも、老後の不安要因で「お金」が5年連続トップになっています。
かつての老後不安はお金よりも健康だった
一連の老後資金問題を見ていて感じることがあります。
それは、高齢者の悩みが変わってきていること。そしてその変化が、マスコミによって作り出されること。
私は幼少期からお寺で育ち、また、健康関連の事業に携わっていたことから、高齢者の老後不安については、若いころから感心がありました。
だから、法事や行事で出会うたびに、檀家の高齢者に尋ねたものでした。
「おじいちゃん、今一番望むものは何?」
「おばちゃん、老後は何が一番不安?」
そんな質問を投げかけると、決まって返ってきた答えが、
「歳をとって若い人に迷惑かけたくない」
「最期まで、トイレぐらいはできるだけ自分で行きたい」
と言うものでした。