運送コストの上昇の反動は商品価格のアップにつながる
最近、ニュースなどでトラック業界の「2024年問題」というのを耳にするようになった。働き方改革が進むなか、それでもトラック業界は過酷というのも知られているところで、人手不足や高齢化など、背景にある諸問題についても注目が集まっている。その流れのなかでの「2024問題」とは、一体どういった内容で、なにが話題のポイントなのかを整理して紹介しよう。
一番の根っこにあるのは労働時間で、2024年4月1日からトラックドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されるから「2024年問題」と呼ばれる。残業時間制限は多くの業種では2019年(大企業)、2022年(中小企業)で先行されているものの、トラックドライバーや建設業などでは5年間の猶予が与えられているので2024年というのがキーになる。
ただ、トラックドライバーについては制限時間が240時間も多くて、「月100時間未満」「2〜6カ月での平均が80時間以内」「月45時間を超える月は6カ月まで」といった規制はないので、ゆるいと言えばゆるい。
厳格だと立ち行かないという点を考慮してのことなのだろうが、それでもニュースで大々的に報じられるのは、この規制内容でも実現はかなり厳しいからにほかならない。いまでこそ、人手不足が問題なのに、さらに深刻化する。残業時間は抑えられつつ、中小企業でも割増が25%から50%になっているので、負担は増えている。残業ができないということは、一般的には社員を増やせばいいが、「募集してもまったく来ない」というだけに、どうしようもない。
また、働く方としては、健康問題は別にして、働く時間が減るので残業時の割増賃金があるにしても収入は減ってしまう可能性が高い。一方の運送会社としては、コストも上がってしまうのが一番痛い。確実に利益は減るので、その分をどうするか? これもまた問題になっているが、荷主が運賃引き上げに応じてくれない風潮が強いだけに、どうしたらいいのかわからないというのが実際のようで、関係者に聞いても「お願いはしてみる」と言った程度だ。
ただ、ここまで深刻だと、応じないと誰も運んでくれなくなるだけに、運賃値上げは実行されていく可能性も高いようには思う。もちろん運賃が上がれば、我々が購入する商品の価格も上がることにはなるが。
運送業界は全産業平均より「1割ほど安い賃金」「約2倍の有効求人倍率」「3歳ほど高い平均年齢」など、問題点がデータに如実に表れていて、通販の拡大で増え続ける物流量など、解決策が見いだせないのが実際のところ。なかには「2024年に規制をかけなければいい」という現場の声を無視した意見もあったりする。
いま働いているドライバーを使い倒せばいいということなのだろうが、その反動は大きいし、ドライバーだってひとりの人間だけに、ストレスのない健康的な生活を送る権利がある。それが2024年に解決するかは判断が難しいというのが実際のところだろう。