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【毎日新聞】鞆の浦で28日から観光鯛網 サポート漁師と共に伝統つなぐ/2023/4/26

【毎日新聞】

2023/4/26

広島県福山市・鞆の浦の初夏の風物詩「観光鯛網」が28日~5月7日開催される。江戸時代に瀬戸内の鞆の浦で編み出された漁法をベースにした観光行事だが、漁師の高齢化や人手不足は深刻。鯛網を主催する福山観光コンベンション協会は、本職に交じって網を引いたり、観光客をもてなしたりする「サポート漁師」を初めて採用し、35人が漁に参加する。

新型コロナ禍で2020年、21年は中止、22年は5日間だったが、今年は10日間の日程で開催する。

初夏の産卵期を迎えたタイは鞆沖の水深が浅い漁場に集まり、複数の漁船で一つの網を広げて交差させて魚を追い込む「鯛しばり網漁法」が発展した。江戸時代末から明治にかけて観覧船が出るようになった。

羽田幸三組合長(右端)らの指導で網を引く予行演習をする「鞆の浦鯛網くらぶ」メンバー=広島県福山市鞆町で2023年4月22日午前10時28分、関東晋慈撮影拡大
羽田幸三組合長(右端)らの指導で網を引く予行演習をする「鞆の浦鯛網くらぶ」メンバー=広島県福山市鞆町で2023年4月22日午前10時28分、関東晋慈撮影

漁業の近代化の中でこの漁法は廃れたものの、1923(大正12)年に観光鯛網として復活した。観光客は鞆港から渡船で一旦、対岸の仙酔島に渡り、観覧船に乗り換える。鯛網の船団は6隻。漁師が威勢の良い掛け声で網を引く姿を船上から間近に見た後、観覧船を漁船に横付けし、その場で捕れたばかりのタイを購入できる。

ピークの72年には約2万3000人が観覧船に乗船した。漁法は2015年、市無形民俗文化財に指定された。

1回の鯛網に必要な人手は約40人。地元の鞆の浦漁協には1970年代、漁師は400人ほどいたが、現在は約30人で平均年齢は70歳超。地元だけで重い網を引くのは難しくなり、近年は近隣の漁協から若手の応援を得てきた。

鯛網の船団長を務める羽田幸三組合長(56)は「魚価が下がって漁業の経営は厳しく、コロナ禍も追い打ちとなった。約400年の歴史があり、全国で唯一残る文化を存続したいのだが……」と窮状を語る。

打開策を探る羽田組合長は「漁業経験はなくても、興味を持ってくれる人に手伝ってもらうことはできないか」と考え、コンベンション協会に提案。協会は「鞆の浦鯛網くらぶ」をつくり、18歳以上の参加者を募ったところ、福山や岡山市などから女性3人を含む20~60代の35人の応募があった。3月に福山市内で鯛網の歴史や技術を学ぶ研修会を開き、4月22日には漁船に乗って網を引く予行演習を行った。

女性3人は、協会の知人の誘いに応じた福山市内の20代。タイの販売や観光客の案内などを担当する予定。会社員の高橋江里菜さん(24)は「鯛網のことはほとんど知らなかった。研修会の動画で漁を見る子どもの楽しそうな顔がよかった。実際の漁船もかっこいい」と期待を膨らませた。コンビニ経営の福富真澄さん(27)は「鞆の浦で人の手で網を引く漁が続いていることを初めて知った。たくさんのタイが捕れるところを見てみたい」と本番を心待ちにする。

岡山市の梶尾邦喜さん(69)は「観光の仕事で鯛網を2回見て、網を引き上げる迫力に感動した。福山の伝統のために少しでも手伝いをしたかった」と参加の動機を語る。

研修を受ける女性メンバー=広島県福山市本町で2023年3月12日午前11時3分、関東晋慈撮影拡大
研修を受ける女性メンバー=広島県福山市本町で2023年3月12日午前11時3分、関東晋慈撮影

鞆町に昨年移住してきた月岡聡太さん(25)は「地元の伝統文化に積極的に参加したかった」と話し、演習で網を引き終えると「手作りの網からも歴史を感じた。漁師にはなれないが伝統をなくしたくない」と真剣な表情を見せた。

コンベンション協会の石口和寛事務局長は「予想以上の反応があった。初めての試みで不安はあるが、安全を確保し、メンバーの活躍に期待したい」と話す。羽田組合長も「漁業の現場は厳しいけれど、強い意志を持ってきてくれているので心強い。市民の力を借りながら鞆の財産を次代につなぎたい」と笑顔を見せた。

観覧船は午前11時出発。完全予約制(7日前まで)で高校以上3000円、小中学1500円など。福山観光コンベンション協会(084・926・2649)。【関東晋慈】


 

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