【gentosha】
2023.9.20
貧しいかどうかは「見た目」で判断することができません。貧しい人は貧しさを恥ずかしいと考えて、できるだけ隠そうとするのです。本記事では、石井光太氏の著書『本当の貧困の話をしよう 未来を変える方程式』(文藝春秋)より、同氏が17歳の若者にもわかりやすく、日本の貧困の実態について語りかけます。
貧しい人は「貧乏」を隠す
ここで一つ、考えてもらいたいことがある。もし君が貧しかったとしたら、そのことを人に打ち明けるだろうか。
きっと、君は貧しいことを恥ずかしいと考えて、できるだけ隠そうとするに違いない。ごまかしたり、ウソをついたり、人目を避けたりして、「貧乏」というレッテルを貼られることから逃げようとするはずだ。
作家の開高健(かいこうたけし)という人がまさにそうだった。ノーベル文学賞を獲った大江健三郎や、元東京都知事の石原慎太郎などと同じくらいの時代に活躍した作家で、27歳で芥川賞をもらってからは小説だけじゃなく、ベトナム戦争の従軍ルポなんかも書いた人だ。『オーパ!』など世界を舞台にした釣りの紀行もあるのでぜひ読んでもらいたい。
開高健は戦前の生まれで早くに父親を失い、中学生の頃からアルバイトをして家計を支えていたそうだ。彼は貧しさゆえに学校にお弁当をつくってもっていくことができず、昼休みはトイレへ行くふりをして教室を抜け出し、誰も見ていないところで水道の水をたらふく飲んで空腹をしのいでいた。
きっと、クラスメイトは彼がそうしていたとは知らず、「弁当の時間なのに、あいつはどこで何をやってるんだ。しょうがない奴だな」くらいにしか思っていなかったに違いない。
開高健はつらい思いをしたが、貧困をかたくなに隠すことによって、さらにみじめな思いをしないようにしていた。後々、本の中でその時の悔しさをくり返し語っているのは、彼にとってトラウマのような体験になっていたからだろう。
そう、貧しい人というのは、貧しさを隠して知られないようにするものなんだ。だからこそ、周りの人たちはなかなかそれに気がつかない。そして、勘違いをしてその人を批判してしまったり、見下してしまったりすることがある。
「見えない貧困」が生む誤解
たとえば、君は友達に遊ぼうと言って断られた経験があるんじゃないだろうか。そんな時、君は不満に思って、「付き合いが悪いな」「なんだよ、あいつ」と友達に不平をもらしたりするかもしれない。
でも、その子は付き合いが悪いんじゃなくて、お金がなくて遊びに行けないから断ったんじゃないだろうか。あるいは、親が家におらず、自分が代わりにきょうだいの世話や家事などをしなければならないから、家に帰ったんじゃないだろうか。
もしそうなら、「付き合いが悪いな」とか「なんだよ」という不平は、まったくの誤解だということになる。誤解から相手を傷つけるような言葉を吐いてしまっているんだ。
こう考えてみると、僕たちは知らず知らずのうちに誤った考え方をして、貧しい子供を傷つけてしまっていることがあるといえる。この傷つけるという体験のつみ重ねが、その子に自己否定感を植えつけることになるんだ。
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