【bestcarweb】
2023年11月1日
「下り坂でブレーキが……」や「濡れた路面でスリップして……」など、ヒヤッとした経験のあるドライバーはけっこう多いはず。そんな、突然やってくる緊急事態にも、できるだけベストな対応ができるようになっておきたい。
文/今坂純也(DIRT SKIP)、写真/写真AC
■クルマが滑る(スリップする)原因は?
クルマが滑る主な原因はハイドロプレーニング現象や、路面上に乗った砂や土によるタイヤのグリップ力の低下。ハイドロプレーニング現象とは、雨天時の高速道路で起こりえる現象として知られている。
通常、路面の水はタイヤの溝を通して排水されるが、速度が上がることで排水が追いつかなくなる。こうなると水の上を滑走するような状態になり、ハンドルやブレーキが正しく機能しなくなる。
また、タイヤの溝が過度に摩耗していたり、空気圧不足でも起こりやすくなる。
路面の上の砂や土がタイヤのブロック間に入ったり、タイヤと路面の間に入ることでもスリップは起こる。
さらに雨天時は、路肩の砂や土が路面上に流されて移動することでスリップが起こりやすくなる。ハイドロプレーニング現象と同様に、ハンドルやブレーキが正しく機能しなくなるので非常に危険だ。
■クルマが滑ったときの対処法
●アクセルペダルは踏まず、急ブレーキ操作は行わない!
スリップ中はタイヤのグリップ力が失われている状態のため、アクセルペダルを踏もうが急ブレーキをかけようが効果はまったく期待できない。
アクセルペダルを踏み込んでしまうと、タイヤのグリップ力が回復したときに急加速して前走車に追突したり、グリップ力回復時にハンドル操作が追いつかずに車線を逸脱して事故となる恐れがあるからだ。
急ブレーキをかけるとタイヤはロックし、スリップ→タイヤのグリップ力回復となってもタイヤがロックしているので、その瞬間にさらにスリップ。クルマは完全に制御不能となってしまう。
●急ハンドルも行わない!
スリップ時に急ハンドルを行うと、グリップ力が回復したときにはクルマがあらぬ方向へ進むことになって危険。スリップ時はハンドルが急に軽くなる感触があるので、こうなったら急ハンドル操作を行わないことだ。
スリップすると、焦ってアクセルペダルを踏み込んだり、急ブレーキをかけそうになるが、大事なことは「急な操作を行わない」こと。
ハイドロプレーニング現象によってスリップしても、少し経つとグリップ力は回復するのでとにかく焦らずに!
大きくスリップしてクルマがスピンしそうな感じであれば、“カウンターステア”が有効。後輪が右に滑り始めたらハンドルを少し右に切り、左に滑り始めたらハンドルを少し左に切る操作だ。
カウンターステアはレースなどでよく行われる操作だが、実はほとんどのドライバーは滑った側に無意識にハンドルを切る動作を行うもの。
積雪地方の交差点などでは、スリップに慣れた地元ドライバーがカウンターを当てているのをよく見かけるほどだ。
それでも、クルマがスリップするのは怖いもの。「焦って“急”のつく操作をしない」ことだけは覚えておきたい。