【gigazine】
2022年12月10日
「バットとボールを合わせて1万1000円、バットはボールより1万円高い、ではボールの値段は?」などという質問は一見簡単に見えて、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、プリンストン大学の学生のおよそ50%が答えを間違えてしまったそうです。誤った解を直感的に思い浮かべてしまう原因と対処法、対処法を仕事にも応用する方法について、ビジネス系ライターのハウィー・マン氏が解説しました。
Cognitive Reflection Test – Examples of Reacting vs Checking
https://mannhowie.com/cognitive-reflection-test
3つの質問からなる簡単なテストで認知力の傾向を図るテストは「認知反射テスト(CRT)」と呼ばれています。そのうちの1つが前述の「バットとボールの問題」で、ほとんどの人が最初に「答えは1000円」と考えてしまうそうです。しかし、これは間違いで、答えは500円です。
もしボールが1000円ならバットは1万1000円ということになり、合計すると1万2000円で、質問と矛盾します。しっかり考えれば誰でも分かることですが、3428人の大学生を対象とした調査では約半分の学生が直感的に思いついた回答を残し、その回答を精査することがなかったとのこと。
著名心理学者のダニエル・カーネマン氏はこの認知バイアスを2種類に分け、人には2つの思考プロセスがあると紹介しています。1つは「意識的に熟考することはほとんどなく、素早く実行する」というもので、もう1つは「熟考し、ゆっくりと実行する」というもの。前者は例えば「5×5は?」という問いに回答したり、車で左折するときにウインカーを出したりするなど、直感的かつ容易に行うことができるものです。後者はより多くの努力、集中、計算を必要とするもので、例えば九九の範囲にない「25×7は?」に答えたり、凍結した道路で注意して車を運転したりするときに必要なプロセスです。
思考プロセスには2種類があるという前提を踏まえ、CRTスコアを向上させ、直感的な思考のバイアスを軽減してビジネスに応用する方法についてマン氏が紹介しました。
◆1:認識
人間は常に、最初に「直感的」な反応を示し、すぐに解決しようとする傾向にあることを認識することが重要です。これは避けられないことですが、問題はありません。この反応を認め、解決策をしっかり導くことが大切です。
◆2:一度立ち止まって確認する
自身の意見をシェアする前に、直感的に思いついた最初のアイデアがが誰に影響を与えるのか、その解決策にどれだけの労力が必要かを確認する必要があります。
◆3:自問自答する
本当に問題を抱えているのは誰なのか、その問題はどこから来るのかを知り、最初のアイデアがこれらの問題を解決できるかどうか、もう一度確認します。
以上の方法を応用した事例が次のようなもの。サイトの運営者の立場で考え、ユーザーがファイルをアップロードするのに苦労している状況に「ドラッグ&ドロップでファイルをアップロードできるシステムを実装する」というのが直感的なアイデア。少し立ち止まり、「ファイルサイズやインターネット速度など、UX以外の要因がないか探る」などというのが熟考したアイデアです。
また、「キャンペーンメールが多い」というユーザーからの苦情を受けたときに、「マーケティングメールを止める」というのが直感的なアイデア。「苦情の数や、ユーザーが既存の有料顧客または候補者かどうかを確認し、まずは見込み顧客数が理想的な目標に到達しているかどうかを確認する」というのが熟考したアイデアだそうです。