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2024年3月定例市議会市長記者会見/2024年2月26日更新

2024年2月26日更新

 記者会見などにおける市長の発表や質疑応答をとりまとめ,掲載しています。

会見日:2024年(令和6年)2月9日(金曜日)

3月定例市議会市長記者会見

・芦田川の渇水の状況について

・工業用水の振替給水について

・福山市立大学の複合施設の名称決定について

・“みんなで創る”世界バラ会議福山大会 大会参加者の登録受付について

・2024年度(令和6年度)当初予算 3つのポイント

・2024年度(令和6年度)重点政策

・令和6年能登半島地震について

2024年3月定例市議会市長記者会見 [PDFファイル/2.61MB]

会議録​​

​市長

それではまず3点報告をさせていただいた後,この議会に提出している新年度予算の概要などについてご説明いたします。まず,報告の1点目は,芦田川の渇水の状況であります。先般,少し雨が降ったことをもって,水位は少し上がっておりますが,全体の傾向に大きな変化はありません。

現状は,2月8日時点ですが,三川ダムと八田原ダムの合計貯水量は1,340万トン,貯水率は38.1%になっています。過去10年の平均の貯水率が約80%ですから,これを大きく下回る状況が続いております。このため昨年末から,ダムの貯水量の延命化を図るため,工業用水を20%,農業用水も20%,それぞれ取水制限を継続しています。

契約水量に対して,このままだと20%が不足するわけでありますが,これについては,芦田川河口堰の貯留水を,箕島浄水場を経由して,振替給水をし補っております。このままの状況が続き,この両ダムの合計貯水量が1,100万トンを下回るような状況になれば,さらにもう一段,取水制限の強化が行われます。このままの状態でいくと,2月下旬頃にそうしたことを判断する時期が訪れるものと思いますが,少し先のことを言うようですが,その場合には,工業用水・農業用水の取水制限がそれぞれ30%に引き上げられることになります。なお,その場合であっても,河口堰の貯留水を使うことにより,上水,生活用水への影響は回避されるものと考えております。

このように,河口堰の効果をあらためて整理しますと,取水制限を回避することにより,産業活動への影響が回避されています。当然ですが,現時点で産業活動への影響は生じておりません。また,取水制限をするということは,ダムの放流量を絞っているということです。これがそのまま,ダムの貯水率の減少を抑制している,延命化が図られているということで,これが先ほど申し上げたように,生活用水への影響回避に繋がっているということであります。

一方で,私たちにできることは多くありません。したがって早めの節水のお願いをしたいと思っています。例えば,台所や洗面所で1分間水を出しっ放しにすると,12リットルの水が無駄になってしまいます。こまめに水を止めることをお願いします。お風呂のシャワーについても,こまめに止めていただければと思っております。市民の皆さま方には,早めの節水をお願いしたいと思います。

次に,福山市立大学の複合施設がいよいよ完成いたします。それに伴い,複合施設の名称を決定しました。名前は,「小松安弘記念館」といたします。そもそも,名誉市民の小松安弘様から,福山の未来を担う若者の人材育成のために使ってほしいということで,2016年に10億円の寄附をお預かりしております。

その施設がいよいよ今年5月に完成し6月には落成式典を迎え,9月には供用を開始いたします。イメージ図で説明しますと,手前にある丸い形をした建物が,2階建ての福利厚生棟。そしてその後方,ガラス張りの建物が3階建ての教育研究棟であります。ちょうどこの2つの施設に隠れて見えませんが,屋根の一部が見えているのが,屋根付きの運動場といった施設になっております。

これまで以上に学生たちが実践的な研究活動を行うことで学びが深まり,また住民や企業の方と連携して地域課題に取り組む,そんな拠点になることを願っています。多くの学生や多くの地域住民の皆さま方のご利用を心待ちにしています。

それから3つ目の報告ですが,これまで毎回「Road to 2025」というタイトルで世界バラ会議のトピックスを紹介してきていますが,今回は,大会参加者登録受付の時期が5月から7月に変更となることをお伝えしたいと思います。これまで世界バラ会連合との間で協議をし,5月から受付しようと進めてきましたが,実は今年の7月に,スウェーデン地域大会が予定されています。

世界バラ会連合としては,スウェーデン大会への参加を期待するということで,ぎりぎりまでこのスウェーデン大会への申込受付に専念したいといいますか,集中したいということのようであります。したがって,スウェーデン地域大会が終わった7月から,福山大会への受付を開始してほしいとの要請を受けたものであります。

それでは3月の定例市議会の案件についてご説明いたします。3月議会については,本日,招集告示を行い,2月16日から開会いたします。一次分として提出する内容についてご説明いたします。まず報告案件であります。「損害賠償の額を定めること及び和解の専決処分の報告について」,この1件であります。次に,予算案件でありますが,「令和5年度福山市一般会計補正予算(第7号)」をはじめとする16件であります。

次に,条例案件であります。「福山市手数料条例の一部改正について」をはじめ,20件となっています。そして単行議決案件でありますが,「山陽本線東福山・福山間回生陸橋補修工事委託契約締結の変更について」をはじめ,22件となっています。以上,3月議会へは1次分として,59件を提出しております。続いて,2024年度の重点政策・新年度予算についてご説明いたします。すでに担当部局から,新年度予算の具体的な数値及び重点政策の内容についてレクをさせていただいております。

私の方からはその中のポイントについて,ご説明したいと思います。まずポイントの1つであります,今回の予算の見方でありますが,新年度予算のタイトルは「安心と希望のための挑戦予算」であります。その副題として今回,「未来に向けた新たなステージへ」と付け加えました。そうした思いについて,ご説明します。規模とすれば,過去2番目の規模であります。これまでの最大規模は,2022年度でありました。それに次ぐ規模である,1,902億円です。内容を見てみますと,実はこれまで福山の都市基盤の整備のために,また,平成30年の浸水被害から都市の防災力を向上させるための取組として,抜本的な浸水対策などを進めてきましたが,そうした取組も,2022年度・2023年度をピークに減少する状況となってきました。

一方で,例えば社会保障関係費や給与改定に伴う人件費,公債費など,こうした義務的経費の増加があります。また,システムの標準化など国の制度改正に伴う対応も必要になってきており,これらをしっかりと盛り込むなかで,後ほどご説明いたしますが,総合的な財源確保の取組を行いました。

歳出・歳入の両面にわたる財源確保の取組を行うことで,未来への投資となるソフト事業のための予算をしっかりと確保しております。重点政策ということで,先般ご説明いたしましたが,重点政策の推移を示したのがこの棒グラフであります。(資料:2024年度(令和6年度)当初予算3つのポイント)これまでは,投資的経費がその主要部分,大きなウエイトを占めておりましたが,その間においても徐々にソフトの経費を充実させてきております。

そして2024年度,これは投資的経費のピークアウトの年と重なりますが,新年度においては,若干ではありますが,ソフト経費が投資的経費を上回る,こうした重点政策の中身になっています。重点政策の中身はどういった柱立てになっているかということですが,総額で約158億円であります。もちろんこれは投資的経費とソフト経費の合計でありますが,このなかの1つの柱は,子どもや青年,あるいは働く世代を含むあらゆる世代が輝く魅力あふれるまちづくりを進める取組。2つ目は,安心・安全で快適に暮らすことができる,そうしたまちづくりに向けた取組。さらには,そうした新しいまち,あるいは社会の基盤となるデジタル化の推進。これらをしっかりと進めていきたいと思っています。

先ほどからソフト事業のウエイトを高めてきたとご説明いたしましたが,補足して説明します。これがソフトの部分だけを切り出して,その内訳を色分けしたグラフであります。(資料:(参考)重点政策のうちソフト事業の推移(5つの挑戦別))グラフは,新5つの挑戦に従って色分けしています。この間に大きく予算額のウエイトを伸ばしているのが「挑戦2 希望の子育てと寛容で健やかな社会の実現」のための施策であります。

主なものとして,2019年度に子ども医療費助成の対象を拡充しました。そして2023年度は,昨年10月に子ども医療費助成にあった,所得制限を撤廃するなどしております。そして新年度においては,これは国の制度でありますが,児童手当の拡充が行われます。それと同時に,市独自で,第2子以降の保育料の無償化を実施いたします。また,高齢者にお配りしている優待交通助成,現在,年間3,000円を希望される75歳以上の高齢者の皆さま方にお配りしていますが,この金額を5000円に引き上げます。こうした制度を新たに盛り込み,46億円を確保しています。また,グラフの黄緑色でありますが,これは「挑戦3 人や企業が安心・安全に活躍できる都市環境の構築」であります。

特に,2023・2024年度と,環境施策,カーボンニュートラルに向けた施策に注力する。そういった意味で,しっかりとした額を確保しています。それからグラフの紫色ですが,これは挑戦には入っていませんが,近年デジタル化の推進を進めてきました。このための予算を引き続きしっかりと確保していく,そういった思いが表れています。また,コロナ対策の経費でありますが,2021年度は別立てで7億円を掲載していますが,2022年度からはこの挑戦2でカウントしております。これまでは,どちらかというと遅れてきた基盤整備に必死になって追いつく,そのような予算配分をしてきましたが,それに合わせて,しっかりとソフトのための経費が措置されてきて,現在に,あるいは新年度に至っています。

当初予算3つのポイントの2番目ですが,歳出について重点化を進めることによって,あるいはしっかりとした予算の見直しを行うことによって,規模を抑制する努力も一方では必要でありますが,財源をしっかり確保しながら,必要な施策を実施する,これも当然重要なことであります。5年計画で合計約117億円の財源確保の見通しが立ちました。これは計画目標が約87億円でありますから,これを上回る成果を上げたわけであります。3つの観点から取組を行ってきました。新年度単年での財政節減効果額は約42億円です。したがって新年度は,2025年度以降の新たな歳出・歳入両面に渡る財源確保策の取組の年に入っていくということです。

それから,ポイントの3つ目でありますが,持続可能な財政運営ができているであろうか,こういった検証を常にしながら,財政運営をしております。まず財政の健全性については,実質公債費比率,将来負担比率ともに,引き続き良好な数値が得られています。また,財政の弾力性を意味する経常収支比率が高くなれば,財政の弾力性が失われかねない。こういった関係にあることから,この経常収支比率を特に注視しておりますが,引き続き80%台を維持しています。中核市や県内の平均と比較すると,比較的良好な数字が維持されています。ただこの数値は,今じわじわと上がってきています。先ほど説明した義務的経費の増加が分子を大きくする要因に働くものですから,そうしたことをしっかりと注視していかないといけないということだと思います。

それから,将来にツケを先送りしない,ツケを残さないという意味で,福山市では市民1人あたりの市債残高を注視しています。目標は35万円を下回ることですが,当初予算ベースで34.8万円という数字になります。これについては,3月補正への前倒しなど,そうしたものがいろいろありますから,いろいろな見方ができますが,今,福山市では90億円近い減債基金を有しておりますから,いざというときにはこの減債基金を活用することによって,1人当たりの市債残高を実質抑制することができる。そういった体制がしっかりとできているということです。以上が数字から見た新年度予算の姿です。今度は個別の施策を取り出して,予算の内容の特色をご説明します。

新年度の予算の柱は,「あらゆる世代が輝く魅力あふれるまちづくり」「安心・安全で快適に暮らすことができるまちづくり」「新しいまちづくりの基盤となるデジタル化の推進」の3点です。それぞれの柱から,「子ども・子育て支援」「産業振興」「防災力」「高齢者支援」,さらには「デジタル化」について,今日はご報告します。なお報告のなかで,昨年末に初めて実施した,福山市の公式LINEを使ったLINEアンケート,多くのご意見をいただき現在最終的な集計を行っておりますが,そのなかで多く見られた市民の声については,一部予算のなかに取り込んでおり,対象事業には「市民の声」マークをつけています。

それでは,「子ども子育て支援」からご説明します。この分野の当初予算額は約43億円です。どういった考え方かといいますと,少子化に歯止めをかけるとまで言えるかは分かりませんが,しかし,少子化が進行するなかにあっても,都市の活力は維持しないといけません。そのためにも,子ども・子育て支援をさらに強化する。そして,多くの声を施策に反映していく,これが重要と考えており,そのなかで今回,「経済的な負担が大きい」といった多くの声に応える内容になっています。3つの負担軽減であります。

そのうちの1つは,第2子以降の保育料の無償化であります。あわせて,多子計算の年齢制限を撤廃します。このためにはシステムの改修が必要ですから,改修を終えた2024年9月から開始します。新年度の当初予算額は,約3.3億円です。2025年度は,通年で第2子以降の保育料が無償化されますから,その予算額は約6億円の規模となります。

それから2点目は,不妊治療費助成の拡充であります。子どもを持ちたくてもなかなか持てない,そういったご家庭の悩みにしっかりと応えていかなくてはいけないということで,これまで上限5万円だった治療費助成額を10万円まで引き上げます。これは600件を対象に,体外受精などの医療に助成をしていくものです。

そして3点目は,仕事と子育ての両立支援です。グリーンなものづくり企業の推進などを通じて,社会全体の共働き・共世代についての考えを,少しずつではありますが,しっかりと変える,理解をいただく。そういった取組をしていきたいと思っています。主な予算とすると,1社あたり10万円の奨励金を新たに設けます。共働き・共育て,これが一定程度以上に達成された企業に対して,奨励金を出します。その予算は500万円です。

続いて,「産業振興」における予算額は7億円強です。産業のまち福山の活力維持には,中小企業の元気が欠かせません。多くの地元企業が抱える人材不足の課題や事業拡大のニーズにしっかりと具体的に応えていきたいと思っています。まず人材確保ですが,福山市立大学の学部新設に向けて,新年度は,教員の確保,施設の整備,そしてカリキュラムの作成など,主として事務的な経費をしっかりと支援していきます。一部,施設整備が入ってくるかもわかりません。そして,2025年度の学部設置認可申請につなげていく取組に入っていきます。

また,グリーンなものづくり企業の競争力を高めていくために,プラットフォームを動かしていきます。そして,企業のさらなる成長につなげていきますが,あわせて,この取組を通じて,こうした企業が福山にあるんだということが広く学生に伝わることにより,人材がこちらに向くという意味では,大きな人材確保の2本柱が,「福山市立大学の学部新設」と「グリーンなものづくり企業の推進」の2つの政策だと考えています。

続いて都市基盤整備ですが,今,この福山道路の西端約3.3kmの事業が進んでおり用地買収がほぼ終わっていますので,さらに先線,未事業化区間についての議論を進めています。そのなかで,国道182号線と2号線とが交差するあたりの渋滞が今非常に深刻で,まずはここから手をつけるということで,この2号線を,県道神辺水呑線が高架で跨いで入江大橋まで,あるいはその途中のどこかまで,高架でつなげていく。そうすることにより,国道182号線と2号線との交差がよりスムーズに行われるようになる。

そしてその先,入江大橋あたりで福山道路と連結する事業をまずは先行させたいという思いを持って,これまで期成同盟会は,福山市・尾道市・三原市・笠岡市の4市だけでしたが,5月には,備後圏域の全市町に拡大することで,要請活動を強化していく。こういった思いを持っています。また福山港ですが,令和3年度には箕沖が予定通り完成し,現在,箕島地区が整備中ですが,2025年度中には,岸壁の暫定供用が開始する予定になっており,背後の事業活動に支障のない形での整備が現在も進んでいます。

2025年5月には,バイオマス発電所が稼働します。そのための原料の運び込みがこの暫定供用となった岸壁を利用して行われることになります。次に,新たな産業用地の創出であります。今回の主眼は,規制緩和により市街化調整区域内の工場の新規の立地や既存工場の拡大,この双方のニーズをできるだけ多く満たしていきたい。そして産業用地の確保と優良な農地の確保を,うまく調和させていきたい。こうした取組がいよいよ本格化していきます。

まず既存工場等の拡大に対する要件緩和ですが,これは市の開発基準を見直すことで,要望に応えていくものです。そして,新規立地を目的としたインターチェンジ付近や幹線道路付近において,一定規模以上の開発許可を行います。一方で,今申し上げた2つの規制緩和ですが,これはどうしても農地法や農振法との調整が必要となります。ただ,この地域未来投資促進法に基づく基本計画の策定による用地の確保については,農地法や農振法の法規制を超えて,この産業用地の立地が優先されていくというものです。ただしそのための基本計画の策定や基本計画に含まれる重点促進区域の設定,これについての県・国との調整が必要になってくる,大胆な法改正に基づくものです。

既存工場等の拡大に関する要件緩和と,新規立地を目的としたインターチェンジ及び幹線道路周辺における一定規模以上の開発の許可については,新年度からさっそく運用が開始されるよう,年度内に必要な調整を進めます。特に既存工場等の拡大に関する要件緩和については,この3月議会に条例改正をお願いしています。地域未来投資促進法に基づく基本計画ですが,重点促進区域が設定できるエリア適地の調査を新年度行い,そしてその調査の結果を受けて,いよいよ秋口から基本計画の策定に向けた取組が行われていく。この基本計画に基づく実際の土地利用の申請は,順調にいけば2025年4月1日以降の申請受付となります。したがって,それまでの間を補完してくれるのが先ほど申し上げた,2つの規制緩和による要件緩和といった位置付けになろうかと思います。

これまで説明したのは,個別の企業の進出ニーズや立地ニーズにどうきめ細かく迅速に応えられるかといった観点からの用地の創出ですが,2番目は,連坦した,一丸となった新しい産業団地の創出に向けた取組もあわせてスピード感を持ってスタートさせます。そのためにまずは適地調査を行っていきます。調査を踏まえたうえで,いくつかのさまざまな取組がその後待っています。少し長い目で見た取組にはなるかもわかりませんが,できるだけスピード感を持って進めていきたいと思っています。

北産業団地の2期工事に続く,次なる産業団地の造成に向けた取組です。それから3つ目は,福山港内港地区の埋立に関する検討です。現在,どのような事業スキームが可能なのか,事業採算性がとれるのか,といった調査を内々に進めています。そして今年度中には,国や県とも協議をしたうえで,事業スキームを固めていきます。事業採算性のとれるような事業スキームを見いだしていきたいと思っています。その後は土地利用計画や港湾計画の改定といった手続きを進めていくことになろうかと思いますが,まずはその前提としての議論を今やっています。続いて,防災力です。抜本的な浸水対策が終わりました。そして,小中学校の耐震化も完了しました。こういった一定の防災力の底上げがなされたうえに立って,今度は,ソフト面の取組にもしっかりと目配りをしていこうというのが,この新年度における防災政策です。自助・共助・公助それぞれに基づきながら,しっかりとした対応を進めていきたいと思っています。

今回能登半島で起きた地震,そしてその後の対応,そうしたものをしっかり見極めながら,能登の課題を福山市の課題として受けとめて,しっかりとした対応に努めていきたいと思っています。続いて高齢者支援ですが,予算は約5億円弱です。健康寿命の延伸,そして介護予防の取組を柱に進めていきます。高齢者の外出機会を増やして社会参加を促進し,健康寿命の延伸につなげていきます。

まずは,補聴器購入助成制度を創設します。これは県内初の取組となります。またバス・タクシーなどの優待交通助成を拡充します。これは75歳の市民税非課税者が対象です。それから成果連動型(PFS)の介護予防事業を県内初で実施します。民間事業者との間で目標を共有しながら,目標達成のために民間事業者が知恵を出してくれる,工夫をしてくれる。そして達成されたら,当初約束した報酬をお支払いする,こういった制度です。

それから,これはまだ仮称でありますが,認知症対策として「(仮称)認知症ナビ」の開設を行います。ご家庭でWebを使って簡単に自分の健康状態をスクリーニングできるシステムです。最後にデジタル化ですが,2024年度まで,現在のデジタル化実行計画を着実に進めていくこととなります。新年度はその最終年度ですが,中小企業は実装に向けた支援に移っていきます。

また,自動走行運転も3月補正でこれからお願いすることになりますが,中心市街地での自動運転の実証実験を3月補正に盛り込みながら実施します。そして,公共施設の予約サービス・スマートロックを,2024年度中には全交流館93館に導入を完了する予定です。

現在までに9つの交流館にシステムが入っていますが,それを一気に全交流館に拡充します。こうしたものを推進しつつ,2025年度以降の新たなデジタル化戦略に向けた議論を同時並行で行っていきますが,まちをデジタル化されたシステムのなかにうまく取り込んでいくという構想が,今「デジタルライフライン全国総合整備実現会議」という国の会議で議論されており,そのなかで中間とりまとめというのがなされております。

内容をかいつまんで申し上げますと,自動走行運転が拠点間を結びますが,それがスムーズに結ばれていくように,つまり車両の改修と同時に基盤の改修が伴う。そして電動自動車であれば,エリアごとに充電ポートが設置される。そうすることで,自動走行運転がよりスムーズに加速化される。またドローンによって,拠点間を,災害時の物資輸送や日常時の生活用品の輸送,医療物資の輸送に使われる。さらには,家庭と市役所がオンラインで結ばれる。スマート保育がさらに進む。こうした世の中を展望できるような新しい戦略の策定に向け,まずはその取組を2024年度で進めていきたいと考えています。

 

記者

能登半島の地震の関係でお伺いします。地震発生から1か月あまりが経ちました。孤立集落であったり,断水や食料の物資の不足。避難所のトイレ,被災者の健康状態の悪化,福祉避難所の不足や耐震化,被害の全容把握など,本当にたくさんの課題が浮き彫りになりました。突発型のこうした大災害で,被災地の外から救援の手がなかなか通りにくいという状況もありました。

これらの課題を踏まえ,あらためて震災の経験や教訓をどう継承し,今後の大災害に生かすかが重要になると思います。広島県の被害予測によると,南海トラフ巨大地震を震源とする地震が起こった場合,福山市では最大震度6強の揺れとなり,建物の全半壊約6万8,000戸,死傷者は約1万2,000人に上るとのことです。

今回の予算でも,例えば災害情報収集システムなど,いろいろと防災の予算を計上されていますが,今後どのように防災の取組を進めていくのか,考えをお聞かせください。また,現在の被災地への支援状況を教えてください。

 

市長

まず,現在も厳しい状況に置かれている石川県の皆さま方に,心からのお見舞いを申し上げます。

こうした石川県の現状や課題を私どももしっかり受けとめて,平常時からの取組に生かしていく必要があるとあらためて考えています。まず,我々が受けとめている教訓について,かいつまんで申し上げます。まず,日頃の備えです。大規模災害とはいうけれども,やはりなかなかイメージをしきれないものなのだろうなと思いました。

我々もそうしたイメージを十分に持てているかどうか,大いに自省する必要があると思っています。自助でいいますと,なかなか耐震化が進まないという点。そして共助でいいますと,都市部においてはコミュニティが希薄化している。中山間部においては,高齢化が進んでいる。これが結果的に防災意識の低下に繋がっている。さらに公助においては,特に能登半島についていえば,災害発生直後に必要となる支援を送り届ける迂回ルートが不足していたと言われている。あるいは,当然,迂回ルートになるべき港も使えなくなってしまうといったことも起きてしまって,そういったことなどが,日頃の備えにおける教訓,それから発災直後については,まず自助の観点からいいますと,避難情報を出されたのでしょうけれども,迅速な避難に繋がったのかどうかという課題が指摘されています。

珠洲市では数十分後に,3.6メートルの津波が来襲したといわれていますが,これはハザードマップで想定されていた事柄だったようです。そうしたことが課題ですね。それから公助でいうと,避難所になるべき小中学校の安全確認に時間を要して,避難所の開設に時間がかかった。これもなかなか,我々にとっても大きな教訓のような気がします。それから,東日本大震災の時にはLINEが使えたといった声がありますが,今回はLINEすら使えなかったという意味で,通信手段をどう確保するかということです。

また避難後,避難所における問題,運営についての問題にも関わってきますが,受援体制とその的確な運用について戸惑いが見られるようです。またこれは実は記者クラブの記者の皆さまからご助言を受けたことですが,避難所で生活する人たちのメンタルヘルスケアも重要な課題なのだということも,我々は感じています。

こうした教訓に立ち,今後強化する防災の取組を,自助・共助・公助に分けて整理しております。自助でいうと,災害リスクの確認や「マイ・タイムライン」の作成,非常時持ち出し品の準備。共助でいうと,津波避難計画の策定や個別避難計画策定率の向上,計画に基づく避難訓練の実施。公助でいうと,受援体制の強化です。これらは主なものだけをピックアップしたものですから,これ以外についても,もっともっと考えていかないといけない,別の観点もたくさん持っております。こうしたなかで私は,特に今回,大規模な災害に見舞われたときの受援体制の強化については,取り急ぎ進めていかないといけないという思いを強くしました。福山市の職員だけではとても大規模な災害への対応の手が回らない。かといって,支援の手がたくさん届いても,それをどう効果的にマネージできるか。そうしたイメージをもっと持たないといけない,あるいは数値計画や数値目標も盛り込みながら作らないといけないということで,さっそくこの年度末までに,受援計画の見直し素案を固めます。

そして,素案に基づいて,秋には県と合同で連携訓練,受援をどう上手く指揮命令系統に落とし込んでいくかということだと思いますが,そうした訓練を行い,年度末までには,受援計画の改定計画の取りまとめにつなげていきます。それから支援の状況です。人的支援については,発災直後から,国や県,日本水道協会からの要請を受け,必要な対応が迅速にとれるよう今現在も備えに努めています。これまで36名の職員が,入れ替わり立ち替わりですが,現地に入っています。現在も,現地に入っています。

それからその他の支援ですが,すでに市営住宅の5戸を無償提供しています。引き続き,お知り合いの方がいらっしゃいましたら,ご利用を検討していただければと思います。光熱水費だけご負担していただければ,それ以外の費用負担はありません。それから見舞金ですが,広島県の市長会を通じて,福山市として50万円を送金予定です。それから,義援金の受付もしております。2月8日時点で,多くの義援のお心をお預かりしており,受付金額は1,000万円を超えています。心から御礼を申し上げます。

 

記者

福山地方卸売市場について伺います。公益性があるといったご説明が,委員会の方でもありました。とはいえ数年がかりのとても大きい事業になろうかと思います。市として,市場をどのような位置付けをしているのか,この投資によってどのような効果を見込んでいるのかを教えてください。

 

市長

食品の流通ルートは,大きく変わってはいますが,福山の中央卸売市場の備後圏域70万人の台所をしっかりと支えていく,あるいは安心な食を提供していくといった役割・機能については,いささかも変わりはありません。中国地方でいいますと,広島,岡山に次ぐ第3の規模の地方卸売市場です。新鮮な水産品や野菜を新鮮な状態で台所まで届けるという機能が今の市場には残念ながら欠けています。コールドチェーンというシステムをしっかりと確立しながら台所にも小売店にも支持される,そんな安全安心な食材を提供したいと思っています。確かに,市民からお預かりしている大きな予算を使うことになりますが,こうした市場が引き続き市民生活に安心を与えるものとして機能するという広域的な位置付けには変わりはないと思っています。そういった意味で,この市場の再整備に向けて,国もしっかりとした支援をしてくれるものと思っています。今年10月には,いよいよ事業実施計画を国に提出する,そして令和9年度までの完成をめざして,着実に整備を進めていきたいと思っています。

 

記者

2点お伺いします。まず,先ほど説明された新年度予算について,予算の全体的な基調や性格など,市長の思いとともに一言二言でご説明いただけますでしょうか。もう1点は,世界バラ会議についてです。今回,全体総事業費で7億円超を配分されていますが,本年度にかける思いやこの予算の意義を教えてください。

 

市長

 新年度予算について,端的に申し上げますと,未来を担う子どもたち,そしてその子どもを育てる子育て世帯への支援をしっかりとしつつ,未来への投資を怠りなく行う。そうした意味から,未来展望予算といいますか,未来に繋がる予算。そうした思いを持って,今回の新年度予算を見ています。それから,世界バラ会議でありますが,来年5月の開催に向けていよいよ本格化していきます。3箇年緊急整備計画の最終年でもあり,ハード整備が最終的に終了します。そして,ボランティアの組成やプログラムの最終確認,万博協会をはじめとした国や県との調整,そうしたものをしっかりと見つめ直し,直前1年間の期間に入っていきたい。いい滑り出しをこの4月1日には迎えたいと思っています。

 

記者

先ほどの予算の質問に関連して,伺います。就任1期目から,毎年種をまきながら予算を組んできて,あらためてこれまでの予算と比較して,今回の予算の位置付けや,タイトルに込められた思い・意気込みの部分をもう少し詳しく伺いたいのと,市民の皆さまにどのような変化を感じてもらうのか,どのような成果をめざしていくのか。その意気込みについて伺いたいです。

 

市長

 1期4年間,私は一貫して「未来」という言葉を使い,前を向いて市政運営を進めてきました。そういった4年間でした。そして2020年度からは2期目に入り,かなりの期間がコロナ対応に追われた期間でしたが,そうしたこともあってか,過去3年で使った予算のタイトルは,「安心と希望のための挑戦予算」でした。一貫してそうした思いを込めてきました。今回もそうです。

今期最後の予算になりますが,そのなかでは,変化をどう確実な成果につなげていくのか。そして,そうした確実な成果がどう未来に繋がっていくのか,未来を展望する元気に繋がっていくのか。そうした思いで,予算を編成してきました。これまでは,福山に不足していた,福山が遅れていた都市基盤力,そうしたものに追いつかないといけない。そうした力を持たないといけない。そして平成30年に突如発生した大規模な浸水対策への対応をしっかりしていかないといけない。そうした思いでやってくるなかで,同時に,ハード中心の投資的経費とともに,子ども・子育て施策や,女性,そうした分野にしっかりとした予算を確保していくべきなのか,そうした思いを持ちながら進めてきた。それが,新年度の予算では投資的経費のピークアウトに合わせてソフト政策が注目されるような,そんな結果にもなっていっていると思います。

予算は,市民生活を支えるものであり,実際,福山市で様々な活動をされるのは市民であり,地元産業界,経済界,あるいは様々な団体ですね。そうした人たちが活動しやすい,しっかりとした力を発揮できるような,そしてそのための励みになるような景色,勇気づけるような景色を創出する。「景色が変わったね」と言われるのが,私たちにとっては一番うれしい励みにもなるわけでありますね。そんな市政運営を続けてきたように思います。2024年度もしっかりとこれらの取組の集大成として,予算の執行を行っていきたいと思っています。

 

記者

新年度予算の産業団地の創出に関して,そもそも大前提として,そこまで福山への企業の進出意欲あるいは設備投資意欲は強いのでしょうか。市長の認識を伺いたいです。

 

市長

 1つは,地元企業の設備投資意欲ですが,これは間違いなく高い。例えば北産業団地は,かなりの区画が地元企業の生産能力増強のための用地として売却されています。そしてこれまでもたくさんの用地拡張の可能性を,我々は受けておりますが,市街化調整区域に基づく開発許可基準のために,市内での拡張を諦めて市外に流出するといった声を,本当によく聞きます。これは本市の産業力の維持にとってとても残念なことですね。

そうした意味ではもっともっと市内に細かな産業用地も含めて創出してあげないと,産業界のニーズには応えきれない,そうした思いが非常に強いということであります。それから福山市の産業はどちらかというとものづくりに特化しています。

しかし,ものづくりを支えるためにも大きな物流拠点がいるかもわからないし,あるいはデジタル化,DXを進めるような,新たな産業業種の立地も望まれる,バランスのとれた産業構造を作っていくためにも,外部からも誘致ができればそれに越したことはない。そうした2つの大きな視点から,まだまだ土地の造成は必要だ,急務だ,経済の循環に関わらずそうしたものを急いでやらないといけない,そういった思いを持っています。

以上。

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