【moneypost】
2024/02/17
コロナ禍による売り上げ低迷からなかなか回復できないでいるのが寺院業界だ。一般社団法人良いお寺研究会の調査によると、仏教界全体のコロナ前の総収入は約5700億円だったが、2020年には半分以下の約2700億円に激減。2023年も4000億円程度で、コロナ前の数字には程遠い。廃寺を考える寺院も出始めているという。
そうしたなか、業界の常識を覆す経営方針で関係者の注目を集める寺がある。
「寺の将来を考え、存続させていくために、42歳で見性院を引き継ぎ、その後2年かけて檀家制度を廃止しました」
そう語るのは埼玉県熊谷市にある曹洞宗見性院(けんしょういん)の橋本英樹住職(58)だ。檀家といえば月々の檀家料などを払ってくれる“お寺の生命線”という印象があるが、橋本住職は「実は足かせにもなるんです」と語る。
「15年前に父から代替わりして私が住職になりました。当時、見性院の檀家さんは400軒ほどでした」(橋本住職)
変化を望まない勢力からの大きな抵抗
しかし、高齢化など影響もあって檀家は減少傾向だったという。
「このままでは寺の存続が危ぶまれる状況で、抜本的な改革が必要だと感じました。ただ、何かやろうとすると、コアとなる檀家さんたちによる互助会の総意を取り付ける必要がある。頭の固い人もいらっしゃって、なかなか思うようなことができない。であれば、檀家そのものを廃止して、やりたいようにやろうと考えたのです」(同前)
変化を望まない勢力の抵抗は大きかったという。檀家で結束して住職を追い出したほうが見性院のためになるのでは、といった議論まで出た。
「曹洞宗の本山に訴え出る人もいらっしゃった。本山からはお叱りを受けたのですが、信念を曲げずに、説明と説得を続け、住職になってから約2年後の2012年6月に、檀家制度の廃止にこぎつけました」(同前)
信徒と寺の付き合いが途絶えるわけではない。檀家料や互助会費のかからない会員制度に移行し、現在に至る。とはいえ定期的に入っていた檀家料などがゼロになったわけで、寺としての新たな収入を確立する必要があった。