NHK Web
瀬戸内海で水質の改善が進んだことが地域によっては、かえって漁業に悪影響を及ぼしていることから、それぞれの海域の実情に応じて水質を管理できるようにすることなどを盛り込んだ、瀬戸内海の環境保全に関する法律の改正案が、3日の衆議院本会議で可決・成立しました。
瀬戸内海では、かつては工場や家庭からの排水や開発が原因で窒素やリンが増えて赤潮が頻発していましたが、規制を強化した結果、窒素やリンなどの濃度は大幅に低下しました。
一方、プランクトンの栄養にもなる窒素やリンが減ったことが、地域によっては、養殖のりの「色落ち」など、かえって漁業に悪影響を及ぼしているということです。
こうした状況を受けて、3日に成立した改正瀬戸内海環境保全特別措置法では、窒素やリンなどの濃度を低下させるだけでなく、高めることも可能にしたうえで、沿岸の府県がそれぞれの海域の実情に応じて濃度の目標値を設定できるとしています。
このほか改正法では、瀬戸内海の自然保護につなげるため、人工的に再生した干潟や藻場などを、新たに自然海浜保全地区の対象に加えることや、プラスチックごみの除去や発生を抑えるための対策に、国と沿岸の自治体が連携して取り組んでいくことを定めています。
改正法は、3日の衆議院本会議で全会一致で可決・成立し、今後1年以内に施行されることになっています。
【兵庫県ではイカナゴの漁獲量が激減】
規制を強化した結果、プランクトンの栄養にもなる窒素やリンが減ったことで、兵庫県の沖合では、特産の「イカナゴ」の漁獲量が減少していて、4年前からは深刻な不漁となっているほか、養殖のりが「色落ち」するなど、かえって漁業に悪影響を及ぼしているということです。
兵庫県では、おととし全国で初めて、水質の目標値を設ける条例を制定するなど対策を進めていて、瀬戸内海の環境保全に関する法律の改正を訴えてきました。
3日に成立した改正法では、窒素やリンなどの濃度を低下させるだけでなく高めることも可能にしたうえで、沿岸の府県がそれぞれの海域の実情に応じて濃度の目標値を設定できるなどとしています。
改正法は今後1年以内に施行されることになり、兵庫県は水質管理の計画づくりを進めることにしていて、イカナゴや大型魚の漁獲量の回復やのりの色落ちの問題の解消につなげたいとしています。
兵庫県の井戸知事は「きれいなだけでなく、漁獲量に恵まれた豊かで美しい瀬戸内海の実現を目指し水産資源確保の取り組みを加速させたい」とコメントを出しました。
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