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【ニュースイッチ】CO2排出量を「見える化」。ソフトウエアで把握「ゼロボード(東京都港区)」

ディープテックは、将来的に世界を大きく変える可能性を秘めた科学技術のことを指します。
「可能性に満ちた深い(ディープ)ところに眠っている技術」と、「社会に深く根ざした問題(ディープイシュー)を解決できる技術」という2つの意味があります。
今回は、国際的なサプライチェーン(供給網)全体でのCO2排出量の指標「GHGプロトコル」を可視化できるソフトウエアを手がけるゼロボード(東京都港区)、という記事です。


【ニュースイッチ】【ディープテックを追え】

投資家による「脱炭素」の圧力が強まっている。コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)が2021年6月に改定され、主要企業に二酸化炭素(CO2)排出量開示を求めたことが契機だ。まずは東京証券取引所で22年4月に新設されるグローバル企業向け「プライム」市場に上場する銘柄が対象になる。現在は上場企業の議論が中心だが、中小企業も例外ではない。今後はステークホルダーからの開示要求は強まりそうだ。

GHGプロトコルを可視化

ゼロボード(東京都港区)は、国際的なサプライチェーン(供給網)全体でのCO2排出量の指標「GHGプロトコル」を可視化できるソフトウエアを手がける。GHGプロトコルはCO2排出量を算定・報告する際の国際的な基準のこと。特徴は一つの企業の排出量ではなく、サプライチェーン全体での排出量を重視している点だ。サプライチェーン全体を対象にすることで、より排出抑制に効果があるとの考えから広く使われる。

排出のカテゴリーは三つに分けられる。自社の企業活動を通じて排出される「スコープ1」、他社から提供される電力や熱などの「スコープ2」、そしてそれ以外の他社が排出する「スコープ3」だ。スコープ3は15の項目から成り立つため、最終製品メーカーは把握が難しかった。またスコープ3にあてはまることが多い中小企業は、資金や人材の面から自前での測定が容易ではなかった。

ソフトウエアのイメージ

こうした中、ゼロボードは、利用企業が製品を製造するのに使った原料などの温室効果ガスを「見える化」するソフトを提供している。産業技術総合研究所(AIST)と産業環境管理協会(JEMAI)が共同開発したデータベース「IDEA」などを使い、標準値を割り当てることで排出量を算出する。また、排出量の記録だけでなく、削減効果の比較や気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)など報告書の出力にも対応する。

「把握したい」ニーズを狙う

大きなターゲットはサプライチェーン全体を把握したいニーズだ。最終製品メーカーの間では「脱炭素に取り組まない企業の部材を購入しない」と公表するなど、脱炭素への動きが広がっている。また、東証の最上位にあたるプライム市場では、気候変動リスクの開示が求められる。海外投資家も排出量抑制の情報開示を求めており、ニーズの取り込みを狙う。

渡慶次社長

サプライチェーン全体で脱炭素への取り組みを推進していることが、株式市場の評価を高めることにつながる。渡慶次道隆社長は「将来は個別企業の排出量を割り当てることで削減効果を適切に反映させるようにしたい」と話す。

一方、サプライチェーンだけでなく、金融機関や自治体などを巻き込んだ脱炭素戦略も描いている。金融機関は脱炭素に取り組む企業に対して、独自に低金利の融資を行っている。地方自治体でもそういった取り組みに補助金をつけている。すでに横浜銀行の取引先にサービスを提供。金融機関としても脱炭素の取り組みを把握できれば、脱炭素に向かう途中段階の技術などに投融資するトランジション・ファイナンス(移行金融)の提案もしやすくなる。

ゼロボードは他の企業と連携し、中小企業にとって脱炭素が「コスト」ではなく「インセンティブ」になるような仕組みを作りたい考えだ。また電力事業者などとも連携し脱炭素ソリューションを提供する窓口にしたい考えだ。現在はトライアルとして利用しているアカウントを有料化しながら、1000アカウントほどの利用を目指す。併せて、従業員規模も拡大する。

この連載では、「ディープテック」と呼ばれる先端テクノロジーの事業化を目指す企業を掲載します。
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COMMENT

小林健人

デジタルメディア局DX編集部

記者

二酸化炭素排出の把握は世界的なトレンドです。同様のサービスは国内外のプレイヤーが参入し、競争も激化しそうです。現状は大企業の開示義務が主な需要ですが、普及には中小企業への展開は欠かせません。さまざまな業界と連携して、シェアを伸ばせるかが焦点になるのではないでしょうか。


 

 

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