(デジタル田園都市国家構想)
我が家は、福山市の南部にある沼隈町で、生まれ育った地域です。
近年は、学校統廃合の問題など人口減少による地域課題に直面しています。
一方で、あらためて地域を観察していると、住宅地の中に農園があったり、目の前に緑が豊かな山があったり、他方でス―パ―、コンビニ、図書館、金融機関がしっかりと営まれている。
田園風景と都市施設が共存している。
かつて、大平元総理が唱えた田園都市国家、という構想がありましたが、コロナ後、郊外地域のあり方や農のある風景と生活を価値あるものにしていくべきです。
そういう意味で、整備される光回線という情報インフラは、これからの田園風景に新たな価値を産み出す可能性があります。
岡崎まさずみ
2022/03/24
withnews.jp
プログラミング日本一になった大分の小学生 田舎だからこその強み
昨年末にあった日本一の小学生プログラマーを決める全国大会で頂点に立ったのは、大分市の小学4年生でした。専門のプログラミングスクールがないなど地理的ハンデがありながら、どのようにアプリをつくりあげていったのか。ライターの伏見学さんが取材しました。
3122件から日本一に
2021年12月5日。東京都渋谷区の複合ビル「渋谷ヒカリエ」のイベント会場は、最後の瞬間を前に、静寂に包まれていました。「発表します。第1位、グランプリに輝いたのは……後藤優奈さんです!」3122件のエントリーの中から日本一の小学生プログラマーを決める全国大会「TECH KIDS GRAND PRIX 2021」で優勝したのは、大分市の小学4年生、後藤優奈さん。緊張した面持ちでトロフィーを受け取り、壇上でスピーチをしました。
後藤さんの作品は「楽しく学ぼう!! コミュニケーションアプリ」。手話の指文字や点字をゲーム感覚で理解するためのソフトで、「学ぶ」「試す」「使う」「調べる」の4つのメニューから成ります。例えば、「学ぶ」では、知りたい文字のキーボードを押すと、タブレット画面に該当する点字や指文字の形が表示されます。「調べる」では、画像認識技術を応用し、カメラの前で指文字をつくると、対応する文字が出てきます。ファイナリストの大半は東京など大都市圏の子どもたち。さらにエンターテイメント的な作品が多い中で、ひときわ社会性の高さが目立ったのが後藤さんでした。とはいえ、後藤さんの特技や趣味はピアノ、縄跳び、一輪車など、ごく普通の小学生と変わりありません。なぜ彼女は手話や点字に興味を持ち、それを作品づくりに反映させたのでしょうか。取材を進めていくと、“田舎”で暮らしていることが、社会のさまざまな課題に目を向ける動機につながっていることがわかりました。
ゲーム機もPCも持っていなかった
大分市の南部、かつて豊臣勢と島津勢が戦った戸次川古戦場の近くに、後藤さんの通う竹中小学校はあります。一クラス10人ほどの小さな学校です。「地元の魅力は自然がいっぱいあるところ」と話すように、のどかな環境で後藤さんは生まれ育ちました。日本一のプログラマーと聞くと、幼少期からスマートフォンを使い倒しているようなイメージを浮かべますが、後藤さんにはそれが当てはまりません。
「周りの友だちはみんなゲームで遊んでいたけど、私はゲーム機を持っていなかったし、自分のPCもありませんでした。プログラミングなんてやったこともなかった」そんな後藤さんがプログラミングに出会ったのは小学3年生の夏。大分県が主催する小中学生向けプログラミングコンテスト「Hello, World! 2020」の情報を、父親の優治さんが見つけてきたのがきっかけでした。自分でゲームをつくることができるなんて面白そうだなと、軽い気持ちで参加することに。大会に向けて、プログラミングソフト「Scratch」の基礎から学びました。最初は苦戦したといいますが、大会の講師に聞いたり、図書館で本を読んだりして勉強するうちに、プログラミングのコツをつかみ、メキメキと腕を上げていきました。モチベーションとなったのは、周囲からのフィードバックです。「例えば、クリスマスカードという作品を作って、妹や家族に遊んでもらったとき、楽しいと喜んでくれて自信がつきました」と後藤さんは振り返ります。プログラミングを始めてわずか3カ月後。「メロディーチャレンジ」という音ゲーム作品で大会に臨んだ後藤さんは、いきなり優勝を果たします。県大会で優勝したからといって、一気にプログラミングに没頭することはなく、週に30分から1時間だけ触れる程度。「学校から帰ってくるのが遅かったり、宿題があったりするから」と、後藤さんはマイペースでプログラミングを続けています。
手話や点字を学べる機会を提供したい
2021年になり、再び県大会のエントリーが始まりました。題材を何にしようか考えた末、手話と点字のアプリをつくることを決めました。「以前、知人の紹介で、お寺で手話を学べるイベントに参加したり、コロナ禍で合唱できない代わりに、手話の歌を文化祭で披露したりして、手話に興味を持ちました。点字については、国語の教科書で点字に関する本が紹介されていて、それを読んでから関心が高まりました。以来、街中で点字を見かけては写真を撮っています」興味を持っていた手話と点字は、障がい者が利用するものという共通点がありました。「聴覚や視覚に障がいがある人たちのことを知るにつれて、何か自分がつくったもので役に立てないかと考えるようになりました」と、アプリ開発の経緯を後藤さんは話します。
では、具体的にどのようなものがあれば障がい者は便利なのか。作品づくりのヒントを探るため、県の聴覚障害者センターや点字図書館にアポイントを取り、当事者にヒアリングをしました。そこで聞いた数々の話の中で、後藤さんが最も心に残ったのは、障がい者は積極的に周囲とコミュニケーションを取りたいと願っていることです。「手話を使って一生懸命話しかけても、障がいのない人の大半は分かりません。相手に伝わらないことが不便だと嘆いていたのが印象的でした」プログラミングによってその課題を解決し、両者がコミュニケーションできるものをつくりたい。さらには、誰もが手話や点字を学べる機会を提供したい。後藤さんの目標は明確になりました。作品の中身に関しても、当事者にヒアリングを重ねました。その結果、特にこだわったのは使い勝手の良さです。タッチパネルによる入力だけだと、視覚障害の人はどこを押せばいいか分かりにくいため、キーボードやマウスなどでも操作できるようにしました。障がい者の助けになりたいという後藤さんの思いは結実し、2年連続で大分県大会を制し、そして初出場となる全国大会でもグランプリを獲得。審査員からも社会課題に着目した点や、アイデアを具現化し、使いやすさまで考え抜いた点などを大いに評価されました。
アプリの今後の改良点として、視覚障がい者のために音声で読み上げる機能をつけたり、点字を紙などに出力できるように点字プリンターとシステム連携を図ったりしたいと後藤さんは意気込みます。
田舎だからこその強みと弱み
後藤さんが社会の課題に関心を持ったのは、田舎で生活していることも無関係ではないと、父親の優治さんは考えています。「竹中にはゴミ拾いや祭りなど地域の活動がたくさんあります。そこで出ていくと、地域の困りごとなどを目にする機会は増えます。特に近所には高齢者が多く、彼ら、彼女らが不自由しながら暮らしているのを見ると、何かしら感じるものがあるのでは」この点については、地域との関わりが希薄になりがちな都会の子どもにはない部分かもしれません。他方で、田舎であるがゆえの悩みもあります。それは専門のプログラミングスクールがないことです。この先、スマホアプリなどを作るには、Scratchではなく他のプログラミング言語を習得しなければなりませんが、それを学べるスクールが大分にはほとんどありません。「インターネットがあれば情報収集はできるため、作品のアイデア自体に地域格差はありません。むしろ、いろいろな経験ができる田舎のほうにチャンスがあるのかなと思います。ただ、田舎はプログラミングを教えてくれる人が圧倒的に少ないです。全国大会に行くと、Scratch以外の言語を使う子もいるので、そうしたチャンスを娘に与えてあげられないのは残念です。技術を磨ければスマホアプリなどにもチャレンジできるのに……」
独学だけではなかなかハードルが高いため、聞きたい時にすぐ聞けるような先生がそばにいることがプログラミング教育であっても不可欠だといいます。こうした課題を抱えつつも、今後もプログラミングは続けていきたいと後藤さんは話します。「その時々で社会のためになるもの、役立つものをつくっていきたいです。将来は世の中の問題を解決できるような人になりたい」