兵庫県明石市の江井ケ島漁業協同組合は、劣化して使えなくなったノリ養殖で使う発泡スチロール製のフロート(浮具)を燃料として活用する試みを始めた。コストや環境面から長年の課題だったが、ペレット(粒)に加工して再資源化に挑む。全国的にも先進的な取り組みで、同漁協は「持続可能な漁業を目指したい」と意気込む。(森 信弘)
同漁協は、ノリ養殖の網の固定などに浮具計約2千個を海に浮かべて使う。波や日光の紫外線の影響で劣化し、使用開始から約10年で交換するが、その数は年100~300個。各漁業者が産廃業者に1個約2千円で埋め立て処理を委託してきた。
だが、発泡スチロールは埋め立てても分解されず、環境面からも課題だった。持続可能な開発目標(SDGs)が注目される今、同漁協で調べたところ、燃料化できる可能性を確認。SDGsの取り組みに対する明石市の補助金も活用する試験に着手した。
ペレットへの加工技術を持つ広島市のリサイクル業者に連絡。10月下旬、2台の加工用機械を借りて、古い浮具約600個を処理した。大人が抱えるほどの大きな浮具を粉砕、圧縮後、直径0・5センチ、長さ0・8センチの大量のペレットに加工。だが、形が崩れているものが多く、燃料としての品質アップに向け、広島で機械の開発を進める。
ペレットは、愛媛県の温浴施設で活用する計画。来年2月にも、ボイラー燃料としての有効性を確かめる燃焼試験を行う。ペレットは灯油に比べ、コストが約10%下げられる可能性があるという。
廃フロートの処理は、漁業者共通の課題だ。同漁協は28日、行政や周辺の漁協関係者約30人を集め、ペレットの加工試験を公開。参加者らは写真を撮るなど熱心に作業に見入った。