【中国新聞】
2023/10/26
広島県福山市が2023年2月に復旧した芦田川の潜水橋が「たわんでいる」との情報が中国新聞備後本社に寄せられた。駅家町の現場を訪れると、橋脚に渡した複数の橋板の中央がわずかに沈み込んでいるように見える。橋を管理する市によると耐久性に問題はなく、川が氾濫しにくくする構造にした結果だった。
潜水橋は下山守橋。鉄筋コンクリート製の幅2メートル、長さ約108メートルで増水時には水中に沈む。2018年7月の西日本豪雨で北側の橋板が流失し、21年7月に復旧した。しかし、同年8月の大雨で再び北側の橋板が流されたため、市は23年2月、流失しないよう対策をした上で橋板を置き直したという。
芦田川を管理する国土交通省福山河川国道事務所によると、下山守橋は設置時期が古く、現在の基準を満たしていない。水の流れを妨げやすいため、本来はなくすか、増水時も潜水しない通常の橋を架ける方が望ましいという。
一方で、下山守橋は住民の生活道のため、暫定的に復旧を容認。従来の構造では橋脚の間隔が狭く、ごみや流木が引っかかって洪水の要因になる可能性があるため、復旧時には橋脚の間隔を広げた設計を求めた。
これを受け市北部建設産業課は、21年の復旧の際、北側半分の約49メートルで橋脚の間隔を従来の約4・5メートルから約10メートルに拡大。支える橋脚が減るため、橋板の裏側をくぼませた構造にして軽くした。この構造と橋脚の間が広がったことで、従来よりたわみが現れやすくなった。たわみは設計の想定内であり、強度や耐久性に問題はないという。
取材中、郵便局のバイクが橋を渡った。地域の貴重な交通路となっている下山守橋。一瞬ドキッとするかもしれないたわみだが、災害を拡大させない工夫の結果だった。
© 株式会社中国新聞社