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【ナゾロジー】世界初、日本が「人工光合成によるクリーンな水素」の製造実験に成功

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2021.08.27 FRIDAY

世界初、人工光合成により100m2規模でソーラー水素を製造する実証試験に成功
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https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101473.html太陽エネルギーと水からの水素製造(J-STAGE,学術の動向 2016)
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https://www.jstage.jst.go.jp/article/tits/21/7/21_7_70/_pdf/-char/ja
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Photocatalytic solar hydrogen production from water on a 100 m2-scalehttps://www.nature.com/articles/s41586-021-03907-3
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世界初、日本が「人工光合成によるクリーンな水素」の製造実験に成功

CO2を排出しない次世代エネルギーとして、燃料電池などに利用される水素が注目されています。

しかし現状の大規模な水素製造法はCO2を排出するため、温室効果ガスの削減においてはあまり意味がありません。

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、太陽光エネルギーを利用した光触媒によって水を分解することで、クリーンな方法で水素を生成・回収する実証実験に世界で初めて成功したと報告しています。

新エネルギー・産業技術総合開発機構HP

このシステムは効率は悪いものの、太陽電池による電気分解よりも設計がはるかに単純で安価なため、広く社会に実装することに適しているとのこと。

この研究には、東京大学、富士フイルム(株)、TOTO(株)、三菱ケミカル(株)、信州大学、明治大学が参加しており、詳細は科学雑誌『nature』に8月25日付で掲載されています。

クリーンな水素の生成

水素の製造方法
水素の製造方法 / Credit:NEDO

燃料電池は水素と酸素を消費して電気を生み出し、排出されるのは水という夢のようなクリーンな電源です。

しかし、その利用には1つ問題があります。それが水素の確保です。

水素は宇宙でもっともありふれた元素ですが、純粋な水素というのは実は地球上にあまりありません

私たちが水素を利用しようと考えた場合、何らかの化合物から水素を分離する必要があります。

現在もっとも広く利用されている水素製造方法は、天然ガスに含まれるメタン(CH4)から水素と二酸化炭素に分離するというものです。

現在の水素製造工場は化石資源の精製プラントで作られるためまったくクリーンではない
現在の水素製造工場は化石資源の精製プラントで作られるためまったくクリーンではない / Credit:canva

しかし、この反応を起こすためには多量のエネルギーが必要で、さらに副産物として温室効果ガスである二酸化炭素も生成してしまいます

これでは、クリーンな水素の生成方法としては好ましくありません。こうして作られた水素はブルー水素と呼ばれます。

もう1つの水素製造法は、水(H2O)を電気分解して、水素と酸素を作るというものです。

こっちは生成されるものに問題はありませんが、水を分解するエネルギーをどうやって確保するのかがネックになります。

化石燃料を消費して水素を生成するのでは、やはり意味がありませんので、この場合、再生可能エネルギー(風力、太陽光)を利用する方法が研究されています。

再生可能エネルギーを利用した水素向上のコンセプト画像
再生可能エネルギーを利用した水素向上のコンセプト画像 / Credit:depositphotos

こうして作られる水素はグリーン水素と呼ばれます。

太陽光発電を利用した電気分解技術は、かなり実用的なレベルに到達しています。

ただ、実際に大規模な実用化は行われていません。

その理由が、この方法は非常にコストがかかるということです。

太陽光発電の電気分解で生成した水素は、非常に高価な水素になってしまうのです。

そこで、将来的に安価で大規模に展開できる太陽光を利用した水素精製方法として注目されているのが、今回の技術「人工光合成です。

これは電気分解ではなく、光触媒(太陽光で化学反応を起こす物質)を通じて直接水を水素と酸素に分解してしまうという方法です。

人工光合成システム

今回発表されたのは、人工光合成システムを利用した水素の生成プラントです。

これは、水を水素と酸素に分解させる光触媒パネル反応器と、生成された酸素と水素の混合気体を分離する分離膜を内蔵したガス分離モジュールで構成されています。

光触媒パネル反応器は、透明なガラスの中にチタン酸ストロンチウム光触媒シートと呼ばれるものが格納されています。

このシートとガラスの間の隙間(0.1mm)に水を流し込んで反応させ、水を分解させます。

光触媒パネル反応器の基本単位(左)と紫外光照射時の水分解反応時の様子(右)
光触媒パネル反応器の基本単位(左)と紫外光照射時の水分解反応時の様子(右) / Credit:NEDO,世界初、人工光合成により100m2規模でソーラー水素を製造する実証試験に成功(2021)

この反応では太陽光のうちの紫外光しか利用しないため、太陽から水素(STH)エネルギー変換効率は1%程度と著しく低いのですが、設計が単純で安価であることが重要なポイントとなっています。

このパネルの光触媒シートはスプレーによる塗布で製造できるため、大量生産が可能で相互に連結でき、長期間の使用も可能という優れものです。

これは再生可能エネルギーを使った水素生成のコストが高いという問題を解決する可能性があります。

また、紫外光の量子収率ほぼ100%で水分解ができ、実際は非常に優れた特性を持っています。

こうして水を直接分解することで水素と酸素の混合ガスが生成されます。

これは分離モジュールによって水素と酸素に分けられ、水素だけを回収することにも成功したといいます。

人工光合成プロジェクトの概要(今回の成果は(1)光触媒開発のテーマ)
人工光合成プロジェクトの概要(今回の成果は(1)光触媒開発のテーマ) / Credit:NEDO,世界初、人工光合成により100m2規模でソーラー水素を製造する実証試験に成功(2021)

化学に詳しい人なら、ここで気になるのが、水素と酸素の混合気体って危なくないの? という点です。

水素はよく知られているように可燃性の気体です。それが燃焼に利用される酸素と混ざると非常に危険な爆発物になります。

この混合気体の安全性は、研究者にとっても課題とされています。

しかし、今回のシステムを1年以上にわたって屋外試験した期間中、一度も自然発火・爆発の事故は発生しませんでした。

また、研究者は意図的に各システムの構成部に着火を行いましたが、いずれも破損や破壊は発生しませんでした。

容積3Lの混合気体を貯蔵するタンクも、内部を適切に仕切ることで着火による破壊は起こらないことが確認されたそうです。

つまり適切な設計がされていれば、爆発性の高い酸素と水素の混合気体も安全に貯蔵して運用できることが示されたのです。

今後研究グループは、さらに厳密な安全試験を行うとともに、現在は1%という低いSTHエネルギー変換効率を高める改善をしていくといいます。

効率については紫外光しか利用していないことが問題なので、可視光も利用できるように検討するようです。

化石資源に頼らずに、大規模に展開できるクリーンな水素工場が、いずれ日本から誕生するかもしれません。

以上【ナゾロジーより】


 

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