昨年2021年から急激な木材高騰がおきたウッドショック、【建築現場の知恵袋-HP】「木材価格が急激に高騰!背景と影響、対応と今後の展開について解説」という建築に関する情報サイトにウッドショックについて分かりやすく解説されています。
木材価格が急激に高騰!背景と影響、対応と今後の展開について解説
- 今年2021年に入ってから急激な高騰を見せている木材価格。世界的に起こっている現象であり、日本では主に木材業界や住宅業界へ大きな影響を及ぼしています。今回はそんな木材価格の急激な高騰について、下記4点を中心に解説します。
- 木材価格急騰が起きた背景
- 木材価格急騰が及ぼす影響
- 木材価格急騰への対応
- 木材価格急騰への今後の展開
目次 [hide]
木材の相場高騰 日本では約1.5倍、アメリカでは約5倍に
世界中で起きている木材価格の高騰。
日本では2021年3月頃から始まったこの現象ですが、アメリカで2020年夏頃から始まっていました。
日本においても短期間のうちに木材の価格相場が約1.5倍になるという変動を見せていますが、アメリカではなんと前年比で約5倍もの変動が見られています。
ここではまず木材価格の高騰について、具体的な価格変動を見ながら現状を解説します。
- アメリカでの相場高騰
- 日本での相場高騰
アメリカでの相場高騰
アメリカでの相場高騰は昨年2020年8月頃から始まり、今年2021年5月にピークを迎えました。
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の木材先物相場を基に考えると、価格上昇としては8月頃と比べても4倍以上、昨年の5月頃と比べると約5倍となっています。
なお最新の状況としては、5月7日をピークに現在は下降傾向にあるものの前年比としては依然高い水準となっています。
(この点に関しては、後に「見通しを立てる難しさ」で再度お話します。)
日本での相場高騰
日本での相場高騰は今年2021年3月頃からで、輸入材・国産材ともに短期間のうちに約1.5倍の上昇を見せています。
欧州輸入材のレッドウッド集成平角は前年比約1.25倍、カナダ輸入材のSPF2×4は前年比約1.62倍の上昇となっており、他の木材に関しても1ヶ月で約1万円~2万円上昇してしまうような状況が続いています。
またこれを受けて国産材の需要も高まっており、杉KD柱角が半年で1.4倍になるなど急激な価格上昇となっています。
【参考】日経ビジネス 『住宅業界襲う「ウッドショック」 3カ月で木材価格1.5倍に』
ウッドショックが起きた背景
今回のような木材価格の高騰は「ウッドショック」と呼ばれており、中でも今回は1990年代、2000年代のものに次いで3度目のものとなるため「第3次ウッドショック」と呼ばれています。
- 米中での木材需要の急増
- 世界的なコンテナ不足
- 日本の木材自給率の低さ
米中での木材需要の急増
今回のウッドショックの背景として、アメリカと中国で木材需要が急増したことが1つの要因といえます。
アメリカでは2015年頃から郊外を中心に住宅需要が増加していましたが、コロナウイルスの影響に伴って在宅勤務が増加したこと、コロナ対策として低金利政策を実施したことがその需要に拍車をかけました。
またコロナウイルスへの早期対応を見せた中国も同様に木材の需要が高まっており、世界で木材を取り合う状況が発生、価格の高騰に繋がったと考えられています。
世界的なコンテナ不足
世界的なコンテナ不足もウッドショックの背景の1つといえます。
先程の米中での木材需要急増もコロナウイルスの影響の1つといえますが、コロナウイルスは海運業界に影響を与えコンテナ数を激減させました。
ロックダウンなどで荷動きが大幅に減少した結果として、海運業者がコンテナを手放さなければならなくなっていた為です。
経済回復の兆しが見られ始めた中国やヨーロッパでも現在も輸送は陸路中心となっており、コンテナを使った海路による輸送はまだ難しいと考えられます。
日本の木材自給率の低さ
そもそも日本の木材自給率が低いということも日本がウッドショックに影響を受けている背景の1つといえます。
林野庁の木材需給表(令和元年)によると、日本は製材用材の約半分を輸入に頼っています。
ただし輸入量で見た場合日本よりも米中の方が輸入量が圧倒的に多いため、今回のように世界中で木材の取り合いが起こった際に米中相手に輸入競争に勝つことができません。
このような事情により、日本は今回のウッドショックで大きな影響を受けるに至ったといえます。
ウッドショックによる影響
日本でウッドショックが影響を及ぼしているものとしては、林業界や木材業界はもちろん、住宅業界もあげられます。
ウッドショックによる住宅業界への影響の特徴として、以下の2つを見ておきましょう。
- 住宅価格への影響は限定的
- 注意すべきは工期への影響
住宅価格への影響は限定的
まず懸念点として考えられる住宅価格への影響ですが、実はそこまで大きくなく限定的であるとの見立てが一般的です。
たしかに住宅に使われる木材に関してもその多くが輸入材でまかなわれていますが、住宅価格という観点から見た場合その中で木材が占める割合は約1割と言われています。
このことから、住宅の規模にもよるものの住宅価格への影響は約数十万円と考えられています。
住宅にかかる価格全体から考えるとそこまで大きな額でないと考えられますが、場合によっては使用する木材など設計上の変更が必要だったり規模を小さくしたりといった対応も必要になるでしょう。
注意すべきは工期への影響
住宅業界への影響としては、住宅価格よりもむしろ工期への影響を注意すべきといえます。
住宅価格への影響が限定的なことに対し、工期への影響としては遅れだけでなく建てられない物件も出てきている状況です。
原因としては輸入木材入手の難しさのほかに、国内における対応の難しさや見通しを立てる難しさがあげられますが、これらの点については次で詳しく解説します。
ウッドショックへの対応と今後の展開
最後にウッドショックへの対応は今どうなっているのか、そして今後はどうなっていくのかについて解説します。
結論から述べると、対応としては国産材の増産が求められているものの難しく、また今後の展開としても見通しを立てることが難しいという状況です。
それぞれの難しさについて、以下で詳しく見ていきましょう。
- 国産材による対応の難しさ
- 見通しを立てる難しさ
国産材による対応の難しさ
日本は国土面積の約70%が森林という森林大国であるため国産材の増産が求められることも当然といえますが、これまで輸入木材に頼ってきたために国産材の増産は難しくなっています。
日本はこれまで輸入木材に頼って国産材を使用してこなかったため、木材の生産量も生産者も少ないという現状です。
また日本の山は急峻なため木を伐り出すコストも高く、補助金に頼って国産材の生産を行っているという背景もあります。
そのため国産材の生産は、補助金に頼りながら需要に見合った量だけ行われていました。
このような状況の木材生産業では人手不足も続いており、今回のような急な需要増加に対応できないということが実情です。
見通しを立てる難しさ
ウッドショックの今後の動向について気になるところではありますが、情報を集めるほかできることがなく、見通しを立てることが難しいです。
先に価格変動が始まったアメリカの現状としては、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の木材先物相場では5月7日以降数度の上昇を繰り返しながらも下降傾向にあります。
ただし前年比でいうとまだまだ2倍以上の価格となっていることに加え、そもそも木材輸入自体が難しい状況が続いている日本ではウッドショックの影響が長引く可能性も考えられます。
このような事情から、ウッドショックの今後の見通しについては依然として判断が難しい状況が続いています。
まとめ:木材価格が急激に高騰!背景と影響、対応と今後の展開について解説
今回は現在起きている木材価格の高騰について、その現状や背景、影響や今後の展開について解説しました。
アメリカでは価格の落ち着きが見られる現象ですが、輸入できる量の違いなど日本とは状況も異なるため安心できないという点が難しいところです。
またこのような価格の下落の例が見られたことによって、更に国産材の増産に踏み切ることがためらわれるということも考えられるでしょう。
相場価格の動向を追いながら慎重に判断していくことが必要ですが、工務店など住宅業界としてはしっかりとこの現象について理解し、施主への説明や必要に応じて価格や工期変更などの提案が求められます。