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【forbesjapan】広島の限界集落にあるコミュニティに学ぶ、地域経済の作り方

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再生と循環の俯瞰図

瀬戸内海に浮かぶ大崎下島の小さな集落にあるコミュニティ「まめな」

人口約400人、瀬戸内海に浮かぶ大崎下島の小さな集落に、都心部からひっきりなしに人が訪れるコミュニティがあると聞いたのは、この春のはじめ。それが「まめな」だった。
「くらしを、自分たちの手に取り戻す」をミッションに、介護、農業、教育、テクノロジーの4事業を展開する一般社団法人まめなは、広島県呉市の久比(くび)で独自の経済圏を構築している。
近年、SDGsを筆頭に、グローバルスケールで物事を見ることが増えた。広く遠い世界が近くなった一方で、それぞれの足元(ローカル)が見落とされていた。コロナ禍で国交が分断されるなかで、それが浮き彫りになった。
だから今こそ、狭く小さなスケールで物事を見つめ直す必要があるのではないか……。そんな思いを抱きつつ、ナオライ代表であり、まめな代表理事の三宅紘一郎氏を訪ねた。

(左から)更科安春氏、三宅 紘一郎氏、梶岡秀氏  撮影:福崎 陸央

活性化しないことで得られるもの

呉市出身で、親族に酒蔵関係者が多い環境で育った三宅氏は、孫泰蔵氏とNPO法人ETIC.による起業家育成プロジェクト「SUSANOO(スサノヲ)」の一期生として、これからのスタートアップや事業のあり方を学んだ。

その経験を経て、ただ酒を売るだけでなく、地域にインパクトをもたらすような事業ができないかと考え、2015年に久比の対岸にある離島・三角島でナオライを創業。2019年には、日本酒を低温浄溜してつくる和酒「浄酎(じょうちゅう)」を開発した。

「浄酎を探求する中で、開発に時間をかければかけるほど商売になりにくい社会構造が見えてきて、だんだんとその構造自体を変えたいと思うようになりました」

そこから、奇跡的な出会いが繋がっていく。その一人が、梶岡秀氏だった。

「梶岡さんやナオライのメンバーと久比の深刻な空き家問題や高齢化問題について話しているうちに、空き家を宿に活用して町のコミュニティを再生するイタリアのAlbergo Diffuso(アルベルゴ・ディフーゾ)のようにできないかというアイデアが出ました」

そこで、“介護のない世界”の実現を目指していた更科安春氏との出会いがあり、2019年3月に3人で「まめな」をスタートさせた。


譲り受けた「梶原医院」を自由に集まれる食堂に改装。介護士や看護師がウエイターとして働き、高齢者の見守りも担っている。

久比でいくつかの空き家を改修し、それぞれにテーマを設けて、現在3施設を運営するまめな。この春に初回の改修工事を終え、いよいよ軌道に乗るところにきた。

しかし、三宅氏と話していても、創業期特有の勢力や焦燥感などはなく、ゆったりと落ち着いた空気が流れている。それは、無理に“活性化”を目指そうとしていないところからくるのだろう。

「ただ地域の資源を利用し、それを売って儲ける、というモデルは持続可能ではありません。地域に収益を還元する循環を作っていくことで、ビジネスを永く続けていくことができます」と、三宅氏。

実際、ナオライでも、1500社にものぼる酒蔵の多様性を守ることを目標に、農薬を使わず育てた各地の原料を、規格外であったとしても加工できるように循環モデルを構築している。その収益は、まめなや地域に還元していく計画だ。

「ナオライでは、地域の酒蔵をハブにしたこのビジネスモデルを日本各地に広げていくつもりです。地域の酒蔵と組むことで、一瞬にしてその地域の歴史と文化に繋がれ、一気に入り込めるんです。久比モデルの再現性も常に意識していて、現在全国8拠点に増やす構想があります」

    • 自立型の組織と経済が未来をつくる

      その組織体制にも注目したい。まめなの運営チームには、“萬屋見習い”“大学生農家”“ビスコッティ職人”と老若男女多種多様なメンバーが名を連ねており、各個人が施設内で思い思いの作業に耽る。

      更科氏や三宅氏から、指導や指示はとくにしないという。個人の自立を促す運営体制は、まめなのミッション「くらしを、自分たちの手に取り戻す」に紐づいている。

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      多様なバックグラウンドを持った10代、20代がまめなを牽引する。島の寺子屋や実験場「あいだす」は、彼らが中心となり運営。

      「会長の梶岡さんと畑に行っては、ああだこうだと価値観を共有し合います。そこで、クリエイティブツーリズムがいいねという話になりました。まめなやナオライを訪れた人たちが、“生産”をしてクリエイティビティを高めて帰っていく仕組みが作れたらいいなと考えています」(三宅)

      また、まめなでは、新たな経済の流れを作ることを目的に、社会福祉活動を行う事業者を直接支援できる“独自の経済”の仕組みを取り入れている。

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      地域の企業や個人が地域をよくするという、イギリスのナショナル・トラスト(国民環境基金)を参考にしている。まめなは寄付金によって運営が成り立っている。

      「独自の経済に取り組むことで、いかに自分たちが経済を中心に人生をおくっていたかということに気づきました。お金にならなくても、尊いものはたくさん存在しています。しかしそれらが、“働かなければ”“成長しなければ”と、目の前のタスクに追われることで見えなくなっている」

      現在では、大手商社をはじめとした法人や個人が会員となり、この“独自の経済”の仕組みに参加している。

      「“暮らし”を自分たちの手に取り戻したい。従来の資本主義社会の延長戦上ではなく、生きること、暮らすこと、働くことを根本から考え直していきたい、という人が集まってきています」

      まさに、まめなを訪れたことで得られたのは、さまざまなモノコトに対する“実感”だった。グローバリズムによって広がりすぎたスケールは、私たちからビジネスの実感を奪ったように思う。

      あらゆる物事への実感を自分起点に取り戻すことで、これからのビジネスの解像度は上がっていくのではないだろうか。


      三宅 紘一郎(みやけ・こういちろう)◎ナオライ代表取締役。1983年生まれ広島県呉市出身。日本酒を中国で広げようと20代の9年間を上海で過ごす。2014年ソーシャルスタートアップアクセラレータープログラムSUSANOOと出会い、日本酒文化を未来に引き継ぐナオライを瀬戸内海の三角島を本社に創業。久比・三角島のレモンと日本酒で造る「琥珀浄酎」や「浄酎」「MIKADOLEMON」というお酒をリリース。2019年に一般社団法人まめな共同代表に就任。

      文=佐藤祥子

      日本酒地方創生

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