【ダイヤモンド】

2022.7.28

「倍と半分の法則」とは?

人生をひらく
『人生をひらく 困難に打ち勝つための原理原則50』(PHP研究所)

「倍と半分の法則」について説明したいと思います。

簡単にいえば、納期が決まったなら、半分の納期で走り出せということです。

今では日本電産にも優秀な研究者がたくさんいますが、創業当初は、競争相手となるような大企業には、100人も200人も優秀な研究者がいました。そうした環境下で、同じ締め切りに向かってサンプルをつくったとしても、完成度で敵うわけがありません。

では、どうしたかといえば、納期が1カ月であったなら、半分の納期、すなわち半月で完成させるようにしたのです。そうすれば、たとえ一発目のサンプルがダメでも、まだ納期まで半分残っています。つまり、もう1回チャンスがある。日本電産はそうやって戦ってきました。とくに創業間もない企業においては、この「倍と半分の法則」というのは、ものすごく大切なものになると私は思います。

もっといえば、創業時の企業であろうが、大企業であろうが、経営者が土曜日は読書、日曜は散歩というようなスケジュールで動いているようではダメだということです。

これはノーベル賞を取るような研究者でも同じなのです。

私も以前は、一握りの天才だけがノーベル賞を受賞できると思っていたのですが、どうも違うようなのです。あるデータを見たときに驚いたのですが、そのデータには、「1週間あたり78時間以上研究していない研究者はノーベル賞を受賞できない」とあったわけです。週5日、1日8時間研究すると40時間ですから、78時間というのは、ざっと倍の時間になります。つまり、いくら才能があっても、人と同じように研究していては、ノーベル賞は受賞できないということです。

経営者も同じで、10%、15%の利益を上げようと思ったら、土曜日は昼寝、日曜日はゴルフというわけにはいきません。

5%の利益を上げている企業が多い中で、10%の利益を上げようとするなら、2倍努力すればいいと思われるかもしれませんが、実は2倍では難しい。何事も倍にしようと思ったら、二乗の努力が必要だと思ったほうがいいでしょう。つまり、2倍にするためには4倍の努力、3倍にするなら9倍の努力が必要だということです。

経営というのはそういうものなのです。ストイックな生活を送らないと、会社の経営はできない。平均値でいいというなら、平均的なことをやっておけばいいのですが、高い目標を目指すなら、人と同じようにやっていてはいけません。

だから、誰もが経営者になる必要はないわけです。偉くなりたくもないし、そんなに収入もいらない。仕事はほどほどにして、あとは趣味をエンジョイしたいというのであれば、平均的なことをやっていればいいのです。

まずは自分の職業観、人生観を確立して、その上で「経営者になりたい」となったなら、人の4倍、9倍の努力をするようにしてください。