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【note池田紀行@トライバル】経営資源が少ない中小企業は「何をやるか」よりも「何をやらないか」の方がはるかに重要かもよ、というお話

池田紀行@トライバル

HONE Inc.の桜井(@LOCAMA_AT)さんが、こんなツイートをしてくれまして(本の紹介、ありがとうございます♡)。

「ほんこれ」なので、少し膨らませて書いてみます。

戦略はなぜ必要か

「戦略が重要!」なんて言いますが、極稀に戦略なんていらないときがあります。それは、経営資源が無尽蔵にあるとき。

資源が無尽蔵にあれば、すべての施策に全張りすればいい。どれかは当たるでしょう。

でも、99.9%(以上)の会社の経営資源には限りがある。ヒトも、モノも、カネも、すべて有限。

有限なんだから、何かに使えば何かには使えなくなる。

だからこそ、限られた経営資源を一番効くところに一点集中する必要がある。その意思決定のために必要なのが戦略というわけです。

意思決定を惑わす「新薬」の発売

限られた経営資源を一番効くところに一点集中。

至極当たり前のことを言ってますが、これが実に難しい。

なぜなら、巷で次々と「新薬めいたもの」が開発・発売され、それがあたかもあらゆる病気に効く「特効薬」のような触れ込みで流行り始めるからです。

この世に、あらゆる病気に効く特効薬などありません。そんなことは誰もが知っていることです。

にもかかわらず、ビジネスの世界では「○○はもう古い!次は△△だ!」「これをやればどんな企業でも、すぐに、少予算で、簡単に成果が出る!」「今度こそ本物!」「この波に乗り遅れるな!」と新薬(マーケティングの新手法)が喧伝され、多くの会社から売り込みがきます。

でも考えてみてください。そんな「誰もが、すぐに、少予算で、簡単に成果が出る薬」なら、とっとと競合が飲んで成果を出しているのでは?

そんな新薬などないのです。

繰り返しますが、どんな病気にも効く薬など存在しません。あなたの会社や商品・サービスは、競合と違うものです。強みも、弱みも、市場ポジション(シェア)も、顧客基盤も、ブランド資産も、会社の歴史やカルチャーも、経営資源の大小も、何もかも違う。

同業ではない他社なら、商品のカテゴリー関与度も、購買プロセスも、購入頻度も、価格帯も、マーケティング上の課題も、ぜんぜん違う。

そんな中で、すべての企業や商品・サービスにあまねく効く薬なんてあるわけがないんです。

人間の最上位ニーズは「ラクをしたい」

突然ですが、過去に流行ったダイエット(手法)を列挙してみましょう。

青汁ダイエット、りんごダイエット、痩せるせっけん、ボディーブレード、黒酢ダイエット、グレープフルーツダイエット、豆腐ダイエット、乗馬マシンダイエット、巻くだけダイエット、朝バナナダイエット、ロングブレスダイエット、きゅうりダイエット…と枚挙に暇(いとま)がありません。

なぜダイエットはファッド(Fad:伝播範囲が狭く、持続性の短い、歴史的連続性がない小規模かつ一時的な流行)の宝庫なのか。

それは、誰もが「ラクをして痩せたい」という淡い期待を持っているからです。

ビジネスの世界で多くの人が新薬に手を出してしまうのも同じ心理なのでしょう。

面倒なことはしたくない。手間をかけたくない。ラクをしたい。予算はかけたくない。小難しいことはよくわからない。リスクは取りたくない(確実に成果を出したい)。でも即効性のある施策が打ちたい…。

新商品開発や商品改善のためにグループインタビューやデプスインタビューを行い、ニーズ構造化分析(パネルの発言をグルーピングして、ピラミッド型に下位→中位→上位→最上位とニーズを構造化して行くと、ほぼ確実に「手間をかけたくない」「ラクをしたい」が最上位ニーズのひとつとして出現します。

人はラクをしたい生き物だからこそ、「○○はもう古いですよ」「次は△△ですよ」「今度こそ本物ですよ」「乗り遅れちゃまずいですよ」「競合もはじめましたよ」と耳元で甘言を囁かれるとグッときてしまうのでしょう。

やらない方が利益が上がるかも

「Instagramが流行っている!」「いや、いまはTikTokだ!」と始めるのは簡単です。

でも、何をするにもお金がかかります。

  1. 始める前に社員が企画を練る時間

  2. 社内の意思決定にかかる時間

  3. 外注する場合は外注コスト(初期コストと運用コスト)

  4. 広告を出せば広告コスト

  5. 外注管理をする社員の時間

  6. 始めた後に「これ、効果あるの?」と社内で侃々諤々議論したり、分析したり、コミュニケーションする時間

  7. 仮に失敗して撤退する場合、次のアクションのときに「以前やったアレもうまくいかなかったからなあ…」「いやでも今回は…」と揉める時間

結構バカにならないのが、3と4以外のコスト、つまり人件費です。外注に出すコストはキャッシュアウトが発生するのでわかりやすい。でも、社員が企画を練る時間、上層部を含めて意思決定に投下される時間、外注管理をする時間、事後に議論する時間などはすべて人件費です。コストは発生しているけれど、目に見える外注費としての支払いが発生しないため、お金がかかっているように感じづらい。

さらに「ホームページをつくって集客しましょう!」「検索一位を獲りましょう!」「ブログの時代だ」「クチコミが効く!」「バズだ!」「UGCだ!」「Twitterだ!」「Facebookだ!」「エンゲージメントだ!」「Instagramだ!」「LINEだ!」「YouTubeだ!」「インフルエンサーだ!」「TikTok売れだ!」と続けているうちに上層部が「お前たちは次々と新しいものを持ってくるが一向に成果(即効性のある売上獲得)が出ないじゃないか!」と、固く心を閉ざしてしまう、なんて副産物も生まれてしまったり。

施策はコストです。やらなければそのコストはそのまま利益になります。効くはずもない薬を飲むのなら、飲まないほうが利益は増えるかもしれないんです(そしてその可能性の方が遥かに高いという)。

「やらない」という選択肢を持ちましょう

世の中は新商品・新サービスだらけです。それはビジネスの世界でも同じです。そして、それらにはほぼ確実に「効く」と書いてあります。

本にも雑誌にもWeb記事も新薬の推奨で溢れ、多くのベンダーが「やりましょう」「買ってください」と売り込みに来ます。

だからこそ、常に「やらない」という選択肢を持っておいてください。提案を受けたら、「それほんと『うち』に効くの?」と問い詰めてください。

中小企業にとって100万円は大金です。1,000万円なんて大変な額です。「100万円を使う」ということは、100万円以上の「利益」を出して初めて回収です。決して売上ではありません。粗利率30%の商品なら、100万円使って350万円以上売れて初めて損益分岐を超えるんです。しかもそこには稼働した社員の人件費が隠れていますから、500万くらい売れて初めてトントンです。

「それ、やらなくて良いと思いますよ」と言ってくれる人をそばに置こう

流行りの薬を売り込みに来る薬売りはたくさんいるでしょう。でも、「その流行っている薬、オタクには効かないから飲む必要ないですよ」と言ってくれる人はどのくらいいるでしょうか。

そんな人やパートナーを見つけてください。

「新しいことをやって儲かる」可能性より、「やらなくて良いことをやらずに済み、利益が上がる(かつみんな疲弊しなくて済む)」こともとても大事なんですから。

新薬を飲むなとは言ってません

誤解がないように強く補足しておきますが、私は「新薬は効かないから飲む必要はない」と言っているわけではありません。

新薬は、消費者の変化によって変わってきた「効く手法」が必然的なタイミングで登場しているものが多く、また、技術革新によって「やれば効果が出るけど、できなかったことができるようになった」ものも少なくありません。

飲む人が飲めば、ほぼ確実に効くんです。言いたいのは、誰もが飲んで効くわけじゃないよ、ということです。

胃痛には胃薬が効き、頭痛には頭痛薬が効く。胃痛の人が頭痛薬を飲んでも効かない。それだけなんです。

僕が小規模レストランのオーナーだったら

例えば、僕が観光地にある席数10席の小さなイタリアンレストランのオーナーだったら何をして、何はやらないか。

当然、マーケティング予算なんて無い。

まず、最重要なのが、地域に住む「近隣かつ既存のお客様」が求める「価値」を超える「価値」を提供すること。ここで言う価値とは、一言で「イタリアンレストラン」と言っても千差万別です。

料理の味なのか、メニュー多さなのか、ワインの品揃えなのか、コストパフォーマンスなのか、カジュアルな雰囲気なのかによってもぜんぜん違います。そこにきっちりミートさせる。そして事前の期待を超えて(満足ではなく)感動してもらう。好きになってもらう。ファンになってもらう。

まずはここが大大大前提です。ここが中途半端なのにいろんなコミュニケーション施策をやったって意味がありません。ざるにジャバジャバ水を流しているのと同じです。

次に、Google(Map)のクチコミを100件以上まで増やす努力をします。既存顧客でファンになってくれた方々に、率直に「書いてくれると嬉しいなあ〜!」ってお願いします。

理由は、観光地の食事処は現地で探すことも多く、その場合、食べログよりも「いまいる場所」を基点としてGoogle Mapで検索する人が多いからです。

皆さんも自身の行動を思い返してください。

Google Mapで検索してカフェや食事処を探すとき、何に目にとまって指が止まりますか。そう、クチコミ(レビュー)です。レビューは「高評価」であればそれに越したことはありませんが、

4.8 ★★★★★(8)
4.2 ★★★★☆(129)

が隣り合わせにあったとき、どちらに「安心感」を持ちますか? 多くの人は後者であるはずです。理由は、「みんなの意見は、だいたい正しい」ことを僕らは経験上知っているからです。

近隣に住む既存の顧客のレビューが100件を超えれば、一見さんの観光客の目にもとまり、そのお客様が来店して満足してくれれば、「観光で訪れたときにフラッと入りましたが、料理も美味しく雰囲気も良く、最高でした!」と(観光客向けの)レビューも増えていくはずです。

しかし、それもこれもすべて「価値あるサービスを提供しているから」がベースにあるわけで、そこをすっ飛ばしてレビューを増やしたって意味がありません。

次にやるのは、Instagramの公式アカウント運用です。観光地である街の風景を中心に、お店の看板メニューや季節限定メニューを人の体温を感じるグッとくる文章とともに投稿し続けます。そして(ここが重要ですが)ハッシュタグを付けて投稿してくれたお客様には「いいね」と「お礼コメント」を丁寧に行います(リピーターになってくれることや、その観光地を訪れる友達にクチコミをしてもらうため)。

Google Mapのレビューがストック型(ずっと効く。しかも数が増えるほど信頼性が上がって行く)クチコミ施策で、Instagram公式アカウントによるハッシュタグ対応が「フロー型」(リアルタイム対応)のクチコミ対策です。UGC(User Generated Content)と一緒くたにしちゃ駄目なんです。

あとは、地域の既存顧客向けに(メルマガの代わりとして)LINEはやるかもしれません。たぶんWebサイトは持ちません。Instagramの公式アカウントで十分です。そしていずれ良い評判が形成され、お店に行列ができたり、予約が取りづらいお店になったら、ちゃんと取材がきてメディアがPRしてくれます。これらすべての結果、形成される店名の認知と知覚価値向上がブランディングです。

とまあこれは僕の私見ですが、経営資源に(かなり)限りのある零細レストランなら、このくらいが、いや、これがベストだと思います。

そしてくどいですが、Googleのレビューも、Instagram公式アカウントやハッシュタグ対応も、LINEも、すべてお客様が求める価値(を超える価値)を提供できるようになって初めて取り組むべきものであることが大大大前提です。

お客様には「いますぐ客」と「そのうち客」しかいない

とどのつまりがこれなんです。

お店の経営が軌道に乗るまでは、未来のことなど考えている余裕はありません。まずは月次を黒字にして生き延びなければなりません。だから、施策は「いますぐ客」(顕在ニーズのお客様)の獲得に経営資源を集中させる時期でしょう。

でも、2〜3年が経ち、リピーターが増え、月次も年度も黒字となり、少し余裕が出てきたら、「いますぐ客」の「獲得」だけでは無理がきます。次に、「そのうち客」(潜在ニーズのお客様)の「育成」にも経営資源を投下すべきです。

前述のイタリアンレストランなら、「すぐには行かないけど、いつかその土地を訪れたときに行ってみたいお店」として選択肢(想起集合)に入る努力を始めるべきです。

繁盛している店は、「そのうち客」のストックを多く持っている。つまり、多くの人の「機会があったら行きたい」という想起集合に入っている。持続的な競争力の差は短期的な集客力ではなく、中長期的なストック、つまり保有する「そのうち客」の数によって決まっているんです。

※ 想起集合についてはこちらをどうぞ。

これ読むと「そうか!想起集合か!第一想起か!」ってなっちゃいがちですが、それは「生き延びるフェーズ」が終わってからですからね、順番を間違えてはいけません。

「いますぐ客の獲得」と「そのうち客の育成」にそれぞれ経営資源を何割ずつ振り分けるか。それはもう各社各様としか言えません。そしてその方法も業界によって、市場ポジションによって、使える経営資源によって千差万別です。

面倒くさいですね。だからこそ、そこで差が出るんです。それが「競争に勝つ」ということなんです。インスタントな方法なんてないんです。

皆さまの商売繁盛を祈っております。

PS
たぶんお役に立てると思うので読んでください!m(_ _)m

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