西洋からもたらされたリアリズムと、日本古来の迫真的な表現が出会った明治時代、日本独自の「写実」が誕生しました。その系譜は今も脈々とうけつがれており、作家たちがそれぞれに「写実」を理解し、作品に昇華させているといえるでしょう。
深堀隆介(1973-)は、木曽檜の枡や桶などに超難黄変エポキシ樹脂を流し込み、その上にアクリル絵の具で金魚を描くというオリジナルの技法をあみ出した、現代の美術作家です。
深堀は、金魚の頭、胴体、尾を重層的に描いては、透明な樹脂を流し込むという、平面的な処理を繰り返しながら、最終的に立体的な表現に仕上げていきます。描かれた金魚は、生命感に溢れ、まるで本物の金魚が器のなかで泳いでいるかのような印象を与え、観るものを驚かせます。
このたびの展覧会は、明治期の松本喜三郎らの生人形(部分展示)作品を導入として、日本を代表する福山ゆかりの彫刻家,平櫛田中の彫刻作品から、現代作家の平面、立体作品群まで、26人の作家、約120点により、日本の近現代美術における「写実」表現を展望し、そのありようを紹介するものです。(同展は9月23日(金・祝)~11月20日(日)まで開催します。)
深堀隆介「梅花」2020年
木桶、超難黄変エポキシ樹脂、アクリル絵具、高6.7×径32.5cm
大林氏蔵
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