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【ニュースイッチ】ライバルひしめく自動運転、ティアフォーは「低消費電力」で攻める/2022年10月06日

ディープテックは、将来的に世界を大きく変える可能性を秘めた科学技術のことを指します。
「可能性に満ちた深い(ディープ)ところに眠っている技術」と、「社会に深く根ざした問題(ディープイシュー)を解決できる技術」という2つの意味があります。

今回は、「世界各国の自動車メーカーやIT企業、研究所が開発にしのぎを削る「自動運転」技術。ティアフォー(名古屋市中村区)が基本ソフト(OS)を軸に、国内外の有力企業と提携し、自動運転のプラットフォーマーを目指す、という記事です。


【ニュースイッチ】【ディープテックを追え】

2022年10月06日

世界各国の自動車メーカーやIT企業、研究所が開発にしのぎを削る「自動運転」技術。米グーグルの自動運転開発部門が分社化したウェイモなど巨大企業がひしめく中、そこに割って入ろうとする日本のスタートアップがいる。ティアフォー(名古屋市中村区)だ。基本ソフト(OS)を軸に、国内外の有力企業と提携し、自動運転のプラットフォーマーを目指す。

勝機は「消費電力低減と安全性の担保」

加藤CTO(写真は全て同社提供)

「運転は本来こうあるべきだよな」。ティアフォーの創業者、加藤真平最高技術責任者(CTO)は自動運転との出会いをこう形容する。2009年、米カーネギーメロン大学在学中のときだ。以前からヒューマノイドなどのロボット研究をしていた加藤CTO。自動運転はロボット技術に近い上、「社会に馴染みしやすい」と直感した。すでに同大などによる自動運転の実証は始まっていたが、「消費電力を減らしたり、安全性を保証したりするといった領域なら戦える」と勝機を見いだした。

オープンソースで攻める

巨人がひしめく自動運転の世界で、ティアフォーは自動運転のOSを無料で公開するオープンソース戦略を取る。

自動運転はレーザー光を使ったセンサー「LiDAR(ライダー)」やカメラなどのデータをもとに、環境を認識し、運転経路などを判断した上で操作を行う必要がある。オープンソースである「Autoware(オートウェア)」はこうした自動運転に必要な機能を備える。

オートウェアのイメージ

ウェイモなど先行するプレーヤーは自社で技術を抱える。資金力などで劣るティアフォーはソフトウエアをオープン化し、さまざまなプレーヤーが改良を加えやすくして差別化する。オープンソースを基盤に、各社がサービス形態に応じた自動運転システムを構築し提供する。18年に立ち上げた業界団体には半導体設計大手の英アームやトヨタ自動車のグループ会社が参加する。「オートウェアを使うエコシステムを広げることで、米テスラやウェイモに勝てる連合体を作っていく」と加藤CTOは力を込める。

機能に合わせてソフトを選択

同社はオートウェア土台に各種ソフトウエアを開発する。自動運転車を開発する企業に、シミュレーターや運行案内などのソフトウエアを提供して対価を得る。特徴の一つが顧客の求める自動運転の機能に合わせたソフトウエアを提供することにある。

運転手が不要なロボタクシー

例えば運転手不要のロボタクシーと搬送ロボットでは、求められる機能が異なる。ロボタクシーは周囲の状況から最適な運行計画を策定し、安全に運転する必要がある。一方、搬送ロボットは決められたルートを遅滞なく走行することが必要だ。このように自動運転は用途によって必要な要素は多岐にわたり、それぞれ異なる。モビリティーによっては消費電力やデータ処理量の制約も生じる。

自動運転の様子

そこでティアフォーは必要な機能や消費電力、データ処理量に合わせてソフトウエアを選べるようにする。加藤CTOは「先行するプレーヤーは、最高品質のデータ処理能力や多くの電力を消費することを念頭に置いている。一方、我々は顧客の電力消費などの要望に合わせることで、あらゆるモビリティーに適切な価格で自動運転を使えるようにする」と話す。

これを実現するため、新たに低消費電力を実現するソフトウエアやエッジデバイスを開発する。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成を受けている。

顧客が選択したソフトウエアの性能などをシミュレーションするソフトウエアを開発する。消費電力を低減しながら、ソフトウエアの性能を維持できるかを検証できるようにする。実際に使うソフトウエアごとに実証実験などを行うことなく、社会実装することを目指す。消費電力の低減と性能維持を両立する。

エッジデバイスについては、自動運転に適したSoC(システムオンチップ)を開発する。実証実験で使われるような高性能なコンピューターを複数台使うことなく、自動運転を実現する。加えてエッジデバイスでデータを処理して、リアルタイム性を高めたり、消費電力を低くしたりする効果も狙う。

「複数の分野で世界一を狙う」

イヴオートノミーの小型EV

将来はこれらの強みを生かし、自動車や搬送ロボットなど複数の分野で実用化する。すでにヤマハ発動機との合弁会社、eve autonomy(イヴオートノミー、静岡県袋井市)は、開発した小型電気自動車(EV)を使った自動搬送サービスを始めている。

科学技術を基盤にしたディープテックは実装されれば、社会を大きく変える。もちろん自動運転もその一つだ。加藤CTOは「ディープテックは世界一になれる可能性を秘めた分野」と話し、「我々はオートウェアを導入するプレーヤーを多く生み出し、複数の分野で世界一を狙う」と強調する。同社はEVが普及する時期に自動運転のニーズが増加するとにらむ。電子部品メーカーなど多くのプレーヤーがEV分野に参入し、新技術が導入しやすくなると予想するためだ。7月にはSOMPOホールディングス(HD)、ヤマハ発動機、ブリヂストンの3社から合計121億円を調達。NEDOの助成を含めて、約400億円規模の資金で開発を加速させる。「ティアフォーの事業を通じて、次のテスラやウェイモを生み出す」。先行する競合をオープンソース連合で追いかける。

この連載では、「ディープテック」と呼ばれる先端テクノロジーの事業化を目指す企業を掲載します。
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COMMENT

小林健人
デジタルメディア局DX編集部
記者

100回目の更新です!ここまで読んで下さった読者の方、ありがとうございます。今後ともニュースイッチをよろしくお願いいたします!今回は自動運転のティアフォーに話を聞きました。消費電力低減でNEDOの助成を受けている点が注目です。社会実装を視野に入れた際、性能に加えて消費電力は大きな課題になると予想されます。また消費電力が下げられれば、装置の低価格化などの効果も得られます。EVの普及を考えれば、消費電力を抑えることは航続距離の増加にもつながります。


 

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