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【東京新聞】貧困の子の学びを支える無料塾、続けるのは「ムカつくから」…教育への公的支出は先進国最低レベル/2023年1月6日

参加中学生が勉強する様子を見て回る大西桃子代表=東京都中野区で

【東京新聞】

2023年1月6日
<それ、変えませんか?~Change it~>⑤
「これは分からない? じゃあ、まず太陽から見るとどっちになる?」「そっか、先生、分かったかも」
受験を間近に控えた中学3年生5人が机に座り、理科の問題に向き合っていた。Tシャツ姿の男性がそばに立って腕組みをしながら、1問ずつ解説していく。

◆「小2から教科書を一度も開いていない」小4との出会い
先月中旬の日曜午後6時すぎ、東京・中野駅から歩いて10分ほどの公共施設「なかのZERO」3階の学習室に、中学1〜3年の20人が集まっていた。その横には現役高校生や外資系の会社員、中央省庁の官僚、元高校教員など10〜60代の「先生」が付き、休憩を挟みながら午後9時まで指導する。
「授業料はゼロ。先生はボランティアです」。問題集や参考書がぎっしり詰まったキャリーバッグを、フリーライターの大西桃子さん(42)が開けた。2014年4月から始めた「中野よもぎ塾」は、経済的事情などで塾に通えない中学生を対象にした「無料塾」と呼ばれる取り組みだ。
区の施設を借りて開かれている無料の中野よもぎ塾
区の施設を借りて開かれている無料の中野よもぎ塾

きっかけは9年前にさかのぼる。中野に住む大西さんは知人の小中学生の姉妹の家庭教師を頼まれ、衝撃を受けた。「下の子は小4だったが、小2から教科書を一度も開いていないようだった。問題文の意味を一つも理解できなかった」

◆学級崩壊 塾に行けない子が取り残された
背景にあったのは、通っていた区立小の学級崩壊。私立中学受験を目指す一部児童らが授業中に騒ぎ、教員が次々と休職して授業が成立せず、塾に行けない子どもたちが取り残された。

「どんな理由で学習環境が奪われるのかは予測がつかない。お金がないと機会を取り戻せない事態にムカついたんです」。出版社を辞め、無料の塾の構想を固めた。飲み仲間や大学の後輩に声をかけ、十数人のスタッフで始まった。今は総勢100人が協力する。

大西桃子さん(左)が開く無料の中野よもぎ塾に集まって学習する中学生(手前左)たち

大西桃子さん(左)が開く無料の中野よもぎ塾に集まって学習する中学生(手前左)たち

生徒の募集をかけると定員25人がすぐに埋まる。毎年、半分がシングルマザー、きょうだいが3人以上いる家庭も多く、一人っ子は2割程度。「非正規の仕事をしている親が多い。新型コロナウイルス禍で困窮して『味のついたものが飲みたい』と漏らした子もいました」

◆ブラック職場の学校を変えないと
大西さんは公立の中学校が抱える問題とも向き合ってきた。「学校の教員は忙し過ぎて児童1人1人を指導できない。1クラス25人でも、1人で教えるのは絶対無理」。進路指導も「不合格を出さない」ことが最優先されているように感じる。「うちに通うようになって成績が上がった生徒に『絶対うかる』と教員が薦めたのが、お金さえ出せば入れるような私立高。希望する高校の受験を認めてもらえず、泣きながら相談に来た子もいます」

日本は教育への公的な支出額が先進諸国の中でも最低水準にある。少人数学級は実現せず、教員の労働環境は長時間勤務に追われる「ブラック職場」とされ、なり手不足は深刻だ。

問題集などが積まれた中野よもぎ塾

問題集などが積まれた中野よもぎ塾

「とにかく学校を変えないと。無料塾は応急処置。けがが重くなる前に何とかしないといけないのに…」。大西さんはずっと怒っている。「行政には期待できない。これまでもそうだった。ムカつくから続けていることに気付いてほしい」(小川慎一)

 あれ? ちょっと変じゃない? 身の回りの習慣や、ずっと続く制度などに、疑問を感じたことはありませんか。年が改まったこの機会に、そうした疑問に思いを巡らせようと、いくつか事例をご紹介します。
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【連載・それ、変えませんか?~Change it~】
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