書を学ぶ人にとって基本となるものに,古典を手本として書く「臨書(りんしょ)」があります。古典は先人の優れた筆跡であり,時代を超えて受け継がれてきたもので,それらを臨書することで多様な表現技法を学び取っていきます。
ふくやま書道美術館は,「臨書」に適した古典を数多く所蔵しており,学習者用に「臨書テキスト」も発刊しています。冬の所蔵品展2「ベストセレクション -日中書の名品」では,「臨書テキスト」に掲載の名品の中から厳選して展示しています。
画像の「瓊蕊廬帖(けいずいろじょう)」(部分)は,明代末期の王鐸(おうたく)(1592‐1652)が東晋の王献之(おうけんし)(344‐388)の書を臨書した部分です。王鐸の晩年の書風は,創意に満ちた独特の運筆で一気に書き上げ,情念に満ちた強い筆力による表現が特徴ですが,その王鐸も中年期には,古典の臨書を重視する学書姿勢を持っていたことがわかるものです。書の先人たちも,臨書を通して学び,そこから独自の作風を作り上げており,「書の学習の基本は臨書である」と教えてくれています。(同展は3月31日(金曜日)まで開催します。)
王鐸「瓊蕊廬帖(部分)」