【note-てりたま】
2023年3月20日
経理でChatGPTをどう使う?
AIはものすごい勢いで進化し、ここ半年でたくさんのツールが低料金または無料で利用できるようになりました。最近はChatGPTについて、こんなことができた、こんなことはできない、といった発信が急増しました。
混乱状態の中ではありますが、もし経理部門で使うとしたら、どんな使い方があるか考えてみました。
てりたまです。
監査法人で30年強、うち17年をパートナーとして勤めました。
世界中の人々が試行錯誤しているChatGPT、皆さまは遊んでいますか? 経理部門ではどんな使い方ができるでしょうか?
皆さまの中にはすでに相当使いこなしておられる方もたくさんいらっしゃいますので、この記事について「ピントがずれている」「もっと重要な使い方が漏れている」と思われる点も多々あると思います。
そのようなご意見も含めて、ChatGPTの経理での活用について思いを巡らせ、議論していただくきっかけになれば幸いです。
経理でのChatGPTの使い方
ChatGPTは単純作業の自動化にも利用できますが、それだとマクロやRPAでもできます。
ここでは頭を使う業務を中心に、しかもすぐできそうなものに限定しました。
開示資料の作成やチェック
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開示資料の定性情報のドラフト
当期の決算数値から、決算短信、決算説明資料、事業報告、有報の文章部分をドラフトさせる。
過去に公表された当社や他社の開示資料、報道機関などの記事などを参考にすることを想定。特に参考にするべき他社があれば、社名を指定する。
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注記のドラフト
特定の会計事象に関する事実関係と当期の決算数値をインプットし、注記をドラフトさせる。
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開示資料のチェック
開示資料のドラフトについて、数値間の不整合、合計の計算誤り、開示漏れ、XBRLのタグの誤りをチェックする。
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社内用決算説明資料のドラフト
取締役会提出用、社長報告用などのフォーマットに数値を当てはめ、著増減の要因などをコメントする。
会計処理の検討
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会計処理の立案
特定の会計事象に関する事実関係をインプットし、会計基準を踏まえて会計処理を立案させる。
ポジションペーパーをドラフトさせてもよい。
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会計基準の改定について、当社に影響のあるポイントのリスト
新会計基準の導入や、既存の基準の改定について、当社に影響のありそうなポイントをできるだけたくさん挙げてもらう。
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子会社への連結パッケージの作成、更新
会計基準の改定、報告セグメントの変更などに基づいて、連結パッケージの変更箇所を提案させる。
変更した連結パッケージを英語やほかの言語に翻訳する。
監査法人関連
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特定案件に関する監査対応の準備
監査法人ともめそうな案件について、関連する事実関係をインプットし、想定される依頼資料や質問をリストさせる。
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監査報酬の交渉準備
過去3期間の報酬見積りと実績、監査法人が提示した当期の報酬見積りと前期からの変動の説明に基づき、監査法人に対する質問や反論、さらに値引きを交渉できるポイントをリストさせる。
英訳・和訳
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財務諸表の英訳
注記を含めた財務諸表をアニュアルレポート用のフォーマットに置き換え、英訳する。
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プレスリリースの英訳
プレスリリースの単純な英訳。人が訳した英文プレスリリースのチェックもできる。
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英文契約書の仮訳
英文の契約書を経理で検討する必要があるときに、全体を理解するためにざっと和訳させる。
その他
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株主総会の準備
当期と過去5期間の開示資料とプレスリリースに基づいて、株主総会での経理関係の想定問答を作成、更新。
経理でChatGPTを使う上での課題
機密性の高い情報の取り扱い
経理部門では、日常的に機密性の高い情報を取り扱います。
特に公開前の決算に関する情報など、インサイダー情報の流出は絶対に避けなければなりません。
このため、ChatGPTにインプットした情報が他のユーザーへの回答に利用されないことが確実でないと、機密性の高い情報はインプットできないことになります。
2021年9月よりあとの情報のインプット
ChatGPTは、現時点では2021年9月までの情報しか学習していません。
そのあとの情報は必要に応じてインプットすればよいのですが、手間がかかったり、情報量が大きすぎたりするなど、現実的でないかもしれません。
会計処理などを検討するための事実関係のインプット
2021年9月よりあとの情報を学習したとしても、まだ開示していない情報はインプットする必要があります。
会計処理を検討させるために、どんな情報をどのような形でインプットするかは課題です。ここで手間取るようであれば、人間がやった方が速い、ということになりそうです。
最終的には人間が責任をとれる体制
よく言われるように嘘だらけの回答をしてくることもありますので、全面的に信頼することはできません。
必ず誰かがチェックして、内容については人が責任をとれる体制にしておく必要があります。
おわりに
いろいろな使い方をご紹介しましたが、大きく分けて次の2種類の使い方が有効だと考えました。
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最初にたたき台を作る
ゼロから1を生み出すには、多大なエネルギーが必要になるものです。これをChatGPTに任せられると助かります。 -
最後にチェックする
人間がチェックはするのですが、念のためChatGPTにも見てもらって誤りや漏れがないか見てもらえると、安心です。
経理と言っても会計周りだけになってしまいましたが、課題を解決すればかなり用途は広くなりそうです。
皆さまの中で、まだChatGPTを触っていない方がいらっしゃったら、とにかくすぐに触れてみることをお勧めします。
皆さまのお仕事の中でうまく活用していただき、業務の品質向上や効率化につなげていただくことを願っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この投稿へのご意見を下のコメント欄またはTwitter(@teritamadozo)でいただけると幸いです。
これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。
てりたま
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