【中国新聞】
福山大(広島県福山市東村町)の生命工学部海洋生物科学科の学生たちが昨年度から、瀬戸内海のスナメリの生態調査を続けている。船から双眼鏡や衛星利用測位システム(GPS)を使って位置情報や頭数、泳いでいる水深などのデータを集めて生息地を守る対策に役立てる。4回目となった5月の調査に同行した。
海洋哺乳類が専門の山本知里講師(38)の研究室に所属する4年生3人が参加。因島マリーナ(広島県尾道市因島重井町)を出発し、以前の調査でスナメリを確認した広島県竹原市の阿波島近海から愛媛県今治市の大三島周辺を中心に探す。山本講師が「双眼鏡を左右に振って広く探して」などと学生に声をかけながら探すこと約1時間半。大三島北西の沖合約700メートルの場所で2頭が並んで泳ぐ姿を確認した。
すぐに潜ったが、背びれのない灰色の体が波間に見えた。学生たちが位置情報や水温、水深などを記録。水深50メートル未満の浅瀬を好むとされるスナメリは、レーダーによると約21メートルのところで見つかった。その後、同エリアや三原市の沖など午後4時まで探索したが、この日に姿を見たのは1回だった。
幼い頃から漁師の父と釣りに出かけ、スナメリをよく見た小見山恭弥さん(21)は「その頃に比べて魚もスナメリも減っていると感じる」と話す。瀬戸内海のスナメリは、建築用の海砂利採取で浅瀬が減り、藻場など餌を捕る場所が失われたことや漁業による混獲、化学物質による汚染などで数を減らしたとされる。
山本講師は「数は減っても身近なところで生きていることを伝えたい。スナメリを通して海の環境を守る大切さを発信できれば」と意気込む。
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