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【NHK政治マガジン】消防団員が足りない! 存続の危機 変革迫られる消防団/2023年7月4日

【NHK政治マガジン】

2023年7月4日

火災や災害の現場で活躍する地域の消防団。
本業の仕事を持ちながら、ひとたび災害が発生するといち早く現場に駆けつけて消防署員とともに初動対応にあたる。しかしその担い手は減り続けるばかり…
どうすれば活動を維持できるのか?
(宇都宮局 村松美紗)

消防団員 仕事を持ちながら現場に駆けつける

消防団員は、火災や災害が起きると、自宅や職場から現場へ駆けつけ、消火や救助活動を行う。会社員や自営業といった仕事を持ちながらも、非常勤特別職の地方公務員として位置づけられている。

写真:整列する消防団員

報酬もあり、総務省消防庁の調査によると、1人あたり、災害に関する1回の出動に平均8000円程度、日常的な活動に伴い発生する実費として平均で年間5万円程度が市町村から支払われているという。

栃木県佐野市の消防団には地元住民約580人が所属している。

写真:三井広好さん

三井広好さんは、製造業の会社に勤めながら消防団員として活動している。
2019年の大規模災害の際は、佐野市内では次々に被害が発生し、三井さんたち消防団員が住民の救助にあたった。
救助のあとは、住宅の扉をたたいて避難を呼びかける活動も行った。

消防団員 三井広好さん
「アパート1階の住民が『助けてください』と言っていたので、はしごを下ろして団員が下りて助けに行きました。すでに胸の高さまで水が来ていました」

消防団員が足りない!

総務省消防庁によると、消防団員は減り続けている。昭和20年代には全国で200万人を越えていたが、減少し続け、平成2年度には100万人を割り込んだ。令和4年度は78万人余りとなっている。

その理由として、退団する人数が増えているものの、新たに入団する人が減少傾向にあることが挙げられるという。

佐野市では、必要な人数に対して現在約150人の定員割れとなっている。

写真:佐野消防の根岸消防団係長

佐野市消防本部 根岸康貴 消防団係長
「市内で災害が同時多発的に広範囲で発生した場合、消防本部の力だけでは限界があります。消防団員が減少することで、災害対応の遅れが一番の懸念です」

消防団員を確保するには

なんとか団員を確保したいと動き出した佐野市。

毎年恒例となっていた全国の消防団が消防技術を競う大会への出場を原則取りやめた。
「大会に向けての練習の負担が大きい」との声があがっていて、負担軽減を図ったのだ。

消防団の訓練

大会の代わりに、1日で集中して訓練する行事に切り替えた。

さらに、市内3000を超える事業所に、入団の協力を呼びかけるリーフレットも送付して、広報活動にも力を入れている。

ついに着手した消防団の統廃合

それでも、目先の団員確保だけでは、いずれ限界が来ると考え、佐野市は、消防団の仕組みそのものの根本的な見直しにも着手した。
消防団を統廃合する構想の検討を始めているのだ。

消防団員が減ってしまうと活動に必要な人数が集まらず、初動対応にも時間がかかってしまう。初動が肝心な災害対応では致命的だ。

そこで、隣どうしの団をいくつか統合し、地区ごとにある消防団の拠点も1か所に集約。
担当する範囲を広げる代わりに1つの団に必要な人数を確保できるというわけだ。

消防団がなくなる!? 拭えない不安…

しかし、統廃合には住民から不安の声が寄せられた。

「分団は今まで通りに残してほしい」

「出動時間がどの程度遅くなるのか?」

佐野市が行った住民アンケートでは「不安」や「反対」だという回答は7割を超えた。

写真:分団小屋

市街地から10キロ以上離れた山間部の地区で町会長を務める須藤信夫さんが消防団の拠点を案内してくれた。

地元にある消防団の拠点となる「分団小屋」は、古くからこの場所にあり、地元では通称「団小屋(だんごや)」と呼ばれている。
この「団小屋」には、消防車が待機し、ライフジャケットや、浸水を防ぐために使う土のうといった災害時に必要な資機材が備えられている。

統廃合によってもし地元の団小屋が無くなったら、隣の地区を頼ることになるが、この地区には市街地や隣の地区と結ぶ道路は1本しか無い。迂回ルートがないのだ。
地元に団小屋が無いと、いざという時に駆けつけてもらえないのではないかという不安が尽きない。

町会長 須藤信夫さん
「仮に、隣の地区と結ぶ唯一の橋が落ちてしまった場合、この地域は“陸の孤島”になってしまう。やはり危機管理という点では、拠点を優先的に残していただけたらありがたい」

佐野市は、こうした住民の不安を受け止めながらも、消防団が将来にわたって存続できる形を探っていかなければならないとしている。

佐野市消防本部 根岸康貴 消防団係長
「消防団は、地域防災の要。なくてはならない存在です。ありとあらゆる施策を推進して、活性化を進めていく必要があると考えています」

佐野市の取り組みはまだ始まったばかり。
人口減少が進む中、各地の消防機能をどう維持していくのか、対策は待ったなしだ。

宇都宮局記者
村松 美紗
警察と司法を担当。ロケ当日は偶然大雨に。山間部に住む皆さんの不安な気持ちを実感しました。

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