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【毎日新聞】福山大が高級白身魚シロギスの養殖に成功、秋にも出荷/2023/8/29

【毎日新聞】

2023/8/29

天ぷらや塩焼きのホクホクとした食感や淡泊な味わいが魅力の白身魚シロギスの養殖に、福山大生命工学部の有瀧真人教授(63)の研究室が成功した。既に技術を確立して試験出荷を終え、今秋から市場への本格出荷が始まる。

シロギスは本州以南の砂地の浅い海に生息し、釣りの対象魚としても人気。夏から秋が旬で、都市部では高級魚として高値で取引される。

有瀧教授の研究室は広島県尾道市の因島にあり、魚介類の人工種苗で発生する形態異常の研究に近海のシロギスを活用してきた。

シロギスの養殖に成功した福山大の有瀧真人教授=尾道市因島大浜町で2023年8月9日午前11時4分、渕脇直樹撮影拡大
シロギスの養殖に成功した福山大の有瀧真人教授=尾道市因島大浜町で2023年8月9日午前11時4分、渕脇直樹撮影

養殖の研究が始まったのは2015年。地元から沿岸漁業振興につながる技術開発を求められていたこともあり、シロギスの養殖プロジェクトをスタート。学生が釣り上げたシロギスを六つの水槽で飼育し、水温管理や餌やり、卵の測定を続けた。

共食い、病気…一時は全滅

通常なら体長20センチに成長するまで4年かかるが、養殖は1年半と大幅に短縮できた。一方、失敗もあった。共食いが頻繁に起き、20年冬には病気で約3000匹が全滅した。データを蓄積し、最適な飼育密度や餌の量を見いだすなどして課題を克服した。

養殖シロギスの握りずし=福山大提供拡大
養殖シロギスの握りずし=福山大提供

当初から養殖技術の実用化を見据えており、17年の秋冬に養殖シロギスを使ったすしや南蛮漬け、茶わん蒸しなどの試食会を広島県福山市で開催。飲食店経営者らから「歯応えが良い」「甘い」と高評価だった。21年冬に東京や大阪の市場に試験出荷すると1キロ当たり3500~4500円の高値が付いた。「天然ものより鮮度も味も良い」との声に学生らは手応えを感じた。

「びんごの姫」の名で商標登録

23年3月、研究所で生まれた養殖シロギスを、大学のある広島県備後地方にちなみ「びんごの姫」と名付け、商標登録した。4月から産卵を受け持つ生命工学部4年の栗栖航生さん(22)は「登録は福山大の誇りだ」と喜ぶ。

びんごの姫は現在、沖縄県の伊平屋(いへや)島で約1万匹が養殖されており今秋、出荷が始まる。福山大と連携して養殖事業に取り組む水産物卸「クラハシ」(福山市)の天野文男社長は「シロギスは秋から春にかけ流通量が落ち込むため、市場価値は高い」と話し、将来は年間数十万匹の出荷を見据える。

大学の水槽では7代目となる養殖シロギスが泳いでおり、さらなる養殖技術の向上へ研究が続く。生命工学部4年の西村大知さん(21)は光がシロギスの卵に与える影響を調べている。5月から無休で研究にいそしみ「根気の要る作業だが、結果が楽しみ」と話す。

天然もので困難な活魚流通可能

有瀧教授は「シロギスは弱りやすく、天然ものを生きたまま提供することはほぼ不可能だが、養殖シロギスなら活魚で流通が可能」と価値を強調。「不休でシロギスに向き合った学生の頑張りが花開いた。今後も産官学民で連携し、研究成果を地域に還元していきたい」と話している。【渕脇直樹】


 

 

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