誰かと話すだけでゲッソリ。1日のエネルギーを使い果たしてしまう……。そんな、社会に出るだけで何かと疲れてしまう「内向型」タイプの人に朗報だ。
台湾出身、超内向型でありながら、超外向型社会アメリカで成功を収めたジル・チャンは、「静かで控えめ」は賢者の戦略であると語っている。同氏による『「静かな人」の戦略書──騒がしすぎるこの世界で内向型が静かな力を発揮する法』(ジル・チャン著、神崎朗子訳)は、聞く力、気配り、謙虚、冷静、観察眼など、内向的な人が持つ特有の能力の秘密を解き明かし、世界的ベストセラーとなった。
本連載では、本書より、静かな人がその潜在能力を最大限に発揮するためのエッセンスを抜粋・編集してお届けする。第3回のテーマは「『控えめなのに出世する人』がやっていること」だ。(構成:川代紗生)

「正当に評価してもらえない人」の共通点

会社組織ではどうしても、目立つ人、外向的な人が評価されがちだ。

クライアントにどんどん営業し、新しい契約をとってくる。売上など、わかりやすい数字で結果を出す人に注目が集まりやすく、そういう人ほど出世しやすい。それは致し方ないことだろう。

内向型の傾向が強い人にとっては、飛び込み営業をする、短期の売上優先で「とにかくガンガン契約を取る」などが苦手な人も多いだろう。

相手の表情、仕草、言葉づかいなど、細かい言動から感情を読み取ってしまう内向型の人は、「この人は、きっとこの商品をそれほどほしくはないんだろうな」「この商品のほうがこのお客様には合っていると思うけれど、会社的にプッシュしているのは別の商品。どうしよう……」など、あれこれ考えすぎてしまうからだ。

自分が前に出る仕事よりも、まわりをサポートするような仕事を得意とする内向型も多い。

ところが、そういった地味で目立たない裏方仕事ばかりしていると、なかなか上司に評価してもらえない、出世につながりにくい、というジレンマがある。

貢献は「数字」に表れるとは限らない

『「静かな人」の戦略書』には、スポーツの世界で活躍した選手たちを例に、このようなエピソードが紹介されている。

全米プロバスケットボール協会(NBA)に、「マイアミ・ヒート」というチームがある。

2010年のマイアミ・ヒートには、ドウェイン・ウェイドというスター選手、つまり、得点を稼げる選手がいた。だが、優勝を目指していたマイアミ・ヒートは、さらに追加で、2名のスタープレイヤーと契約した。

ガンガン得点が取れるプレイヤーが増えたのだから、当然、優勝に向けて、ファンの期待も高まっていた。

ところが、この戦略はうまくいかず、1期目から優勝を逃してしまったのだ。

多くのファンが失望していた翌年、チームの中で注目されたのは、スタープレイヤーではなく、ロールプレイヤー(補助的な役割の選手)、シェーン・バティエだった。

バティエははじめ目立たない存在だったが、彼の参戦は、チームに絶大な効果をもたらした。マイアミ・ヒートは2年連続優勝を果たし、NBA史上2番目に長い、27連勝まで達成したのだ。

この活躍によって、バティエは「ノー・スタッツ・オールスター」(数字には表れないスター選手)と称されるようになった。

さて、バティエはいったい、何をしたのだろうか。チームにどう貢献したのだろうか。

彼は、自分のことを平凡で、平均的な選手だと思っていた。だから、NBAに抜擢されてまもなく、「自分の仕事は最高のスモールフォワードになることではなく、もっとも役に立つ存在になることだ」と考えるようになったという。

その後、バティエの出場した試合を分析していたコーチたちは、バティエがコートに出ていると、各選手のシュート率や得点率が格段に高くなっていることに気がついたそうだ。

さて、本書では、このエピソードの結びとして、こんな言葉が書かれている。

バティエの資質は、成功するチームの原則を見事に証明している。脚光を浴びるひとりの選手よりも、チームの役に立とうとする選手たちのほうがはるかに価値があり、それがチームの最大の財産であることを。(P.280)

「控えめでまじめな人」が評価されるには?

このように、静かに、黙々とチームに貢献する内向型の人たちは、けっして目立たないかもしれないが、彼らがいるからこそチームは成り立っている。それは、スポーツの世界だけではなく、一般の世界でも同じだ。どんな職場であれ、スーパースターだらけだったら、組織は回らない。

 もしあなたが今、「正当に評価してもらえていない」と悔しい思いをし、「自分も目立つ仕事ができるようになったほうがいいのだろうか」と考えているのだとしたら、少し待ってみてほしい。

それよりも、内向型人間が、内向型ゆえの強みを生かしたまま、上司に評価してもらう方法がある。

それは「マネージング・アップ」、つまり上司を賢く管理する、というやり方だ。

売上高などはっきりと数値化できる実績がない内向型が、上司に注目されるための方法、それが「マネージング・アップ」だ。

本書では、オックスフォード大学およびカナダのマギル大学の経営学教授、カール・ムーアの言葉が紹介されている。

「よいリーダーになりたければ、いちばん重要なことは、部下たちにしっかりと注目すること。そのつぎに重要なのは、上司を管理することだ」(P.310)

これは何も、「ご機嫌取りをしろ」と言っているわけではない。ゴマをすったり、やたらと飲み会に行ったりする必要はない。

「マネージング・アップ」の目的は、利益や特典を手に入れることではなく、仕事の効果や効率を向上させることだ。

マネージング・アップができれば、努力と成果を正当にアピールできるようになるという。

上司を管理する「マネージング・アップ」
すぐにできる2つの方法

さて、それでは「マネージング・アップ」とは、具体的に何をどうすればいいのか。

本書ではいくつかの方法が紹介されているが、ここでは、日常生活で取り入れやすい2つのポイントをお伝えしよう。

1つめは、上司の「目標」を理解することだ。

上司にも達成するべき目標があり、当然のことながら、プレッシャーもある。

自分自身の目標だけではなく、上司の目標を具体的に把握することで、上司が部下に何を求めているのかが理解しやすくなるのだ。

上司や上層部にとってもっとも重要な3~5つの目標を理解すれば、自分のリソースや時間をどう配分すればよいか、おのずと理解できるようになる(P.321)

だからまずは、上司が抱えている「3~5つの目標」を調査し、リストアップしてみるところからはじめてみてはどうだろうか。

そして、「マネージング・アップ」もう1つのポイントは、「小さな貢献」も記録しておくことだ。

なぜこれが必要なのかといえば、謙遜しすぎることをふせぐためだ。

内向型は、自分自身を過小評価する傾向があり、「自分なんてたいしたことない」「自分じゃなくて〇〇さんががんばったから」など、他人に手柄を譲ってしまいがちだ。こうすると、まわりの人たちに自分の貢献をわかってもらえなくなる。

こういう癖から抜け出すためには、どんなに小さなことでも、自分が達成したことを細かく書きとめておくといい。

本書にもこうある。

「新規の販売業者を見つけた」「部門の経費の2パーセント削減に貢献した」「交渉に出席して、部門のプロジェクトの共同作業に貢献した」など何でもいい。
こんなささいな成果なんて重要じゃないと思うようなことでも、とにかくメモしておこう。(P.322)

自分で自分の成果をアピールするなんて……と思うかもしれない。

だが、実際のところ、「何もしなくても誰かが見てくれているはず」というのは理想論であり、現実は厳しい。

本書の著者、ジル・チャンが「マネージング・アップ」が重要だというように、うまく上司を管理する術を身につけないことには、目立たない仕事が正当に評価される日は永遠にやってこない。

自分の貢献を報告することも仕事の一つだと割り切って、「マネージング・アップ」の方法を学んでみてはいかがだろうか。