【gardenstory】
2023.10.19
40年以上の歴史を持つ老舗業界専門雑誌『グリーン情報』最新号から最新トピックスをご紹介! 2023年9月号の特集は、「バラで盛り上がる福山市」と「ドライガーデンから考える環境に適したガーデン」。ほかにも、各種イベントレポート、話題の園芸店や人物紹介、園芸業界でおさえておきたいトピックスなど、注目のテーマが目白押し。業界誌だからこそ発信できる貴重な情報の一部をお見せします。
目次
特集:「世界バラ会議福山大会まであと2年 バラで盛り上がる福山市」
今号の第一特集のテーマは、世界バラ会議福山大会。「第20回世界バラ会議福山大会2025」は、2025年5月18日〜24日まで、広島県福山市で開催されます。テーマは、「Roses for the Future〜福山からはじまる、新しい未来〜」、コンセプトは「みんなで創る みんなで盛り上げる みんなで輝く」。
福山市は日本のバラの魅力と、福山市のバラのまちづくりを世界に発信すべく、市全体で大会づくりに取り組んでいます。
福山市世界バラ会議推進プロジェクトマネージャー・上田善弘さんに本大会についてご紹介いただきました。
世界バラ会議とは
世界バラ会議は世界バラ会連合が、3年ごとに各地で開催する世界大会です。
世界バラ会連合には39カ国のバラ団体が加盟し、日本からは(公財)日本ばら会が加わっています。
世界大会の間の2年間には地球大会および国際ヘリテージローズ(遺産バラ、後世に残すべき貴重な遺伝資源としての古い品種や野生バラ)会議が開催されます。
これらの大会(会議)では、加盟国を中心として世界中のバラ愛好家が集まり、バラについての最新の知識の啓発と普及、バラの分類やコンテスト審査基準の標準化などについて議論し、愛好家の相互親睦、情報交換が行われます。そのために、講義、連合の各種委員会会議、現地視察および交流会が開催され、大会の前後にはバラ園視察を主とするツアーが企画されます。
日本では2006年に大阪市で初めて世界大会が開催され、日本を含め世界27カ国から約700名が集いました。それ以来、約20年ぶりの日本での開催になるのが福山大会です。
注目は、世界大会ごとに決定される栄誉の殿堂入りバラと、世界バラ会連合が認定する優秀庭園賞。2022年にオーストラリア・アデレードで開催された世界大会では、グラウンドカバータイプのバラ ‘フラワー・カーペット®️・ローズ・ピンク’が殿堂入りのバラに選ばれました。殿堂入りのバラは、世界中で愛され、バラの発展に貢献した品種が選ばれ、時のバラ品種の潮流を象徴するものとなります。
なぜ福山なのか
福山のバラの歴史を辿ると、戦後復興と深い関わりがあることがわかります。福山市は終戦間際の1945年8月8日の空襲により、街の約80%が焼け野原となりました。この荒廃した街の中心部に市民が約1,000本のバラを植栽したことから始まっています。現在、ここはバラ公園として市民に親しまれ、花の季節には美しい景色を展開しています。
その後、行政と市民が一体となってバラ植栽を進め、2016年には累計100万本のバラが配布・植栽され、「100万本のばらのまち福山」が実現します。この間、バラが市の花に制定され、市内に植栽されたバラを管理する地域リーダーの養成のため、福山ばら大学が開講されました(2010年に開講。2022年までに584名が修了)。
これらの長年にわたる活動と、バラが戦後復興のシンボルとなってきたこと、さらにはバラから育まれた利他の心(ローズマインド)などが世界バラ会連合に評価され、福山で世界大会が開催される運びとなりました。
「ローズ・エキスポ・フクヤマ2025(福山ばら博覧会2025)」
福山市での大会期間中は、街をあげて市内全域を使ったばらの祭典「ローズ・エキスポ・フクヤマ2025(福山ばら博覧会2025)」が開催されます。
福山市では、1968年から毎年5月第3週末の2日間、福山ばら祭が開催されてきました。コロナ禍で中断されましたが、再開された2023年のばら祭には41万人もの人々がバラを目当てに福山を訪れました。
「ローズ・エキスポ・フクヤマ2025」も福山ばら祭と同時開催になり、よりにぎやかな祭典となることでしょう。
福山市の未来に向けたまちづくりや市民活動をご紹介
本特集ではそのほか、福山市の未来に向けたバラのまちづくりについて、福山市のまちづくりに深く関わる神戸国際大学教授/株式会社ARTFUSION代表取締役・白砂伸夫さんに、そして、「100万本のばらのまち」を支えるローズマインドを持った市民活動について、福山ばら会会長・石井稔さんにお話を伺っています。
福山市のバラや、バラを扱う生産者7社に聞いた各社イチオシの品種10種も必見。ぜひ、誌面をお手に取ってご覧ください。
特集:「ドライガーデンから考える環境に適したガーデン」
特集「ドライガーデンから考える環境に適したガーデン」では、チェルシーフラワーショーでも金賞に輝き、イギリスにおいて関心が高まっているドライガーデンについて取り上げています。
干ばつ問題から火が付いたイギリスのドライガーデン
まず、「ドライガーデンの本質を考える」をテーマに、ガーデンデザイナーの吉谷桂子さんにお話を伺いました。
ドライガーデンへの関心の高まりは、環境問題に起因しています。
イギリスでは90年代半ばから干ばつが問題になり、水道水の利用について制限が設けられています。そうした背景から、乾燥に強い植物で構成したガーデンの需要が高まり、ドライガーデンが注目されるようになりました。
2017年のチェルシーフラワーショーでは、マルタ島の乾燥した環境を模したモダンガーデン「The M&G Garden」がグランプリを受賞。今年は、砂漠を想起させるベージュ色のアイリスが印象的なドライガーデン「The Nurture Landscapes Garden」が金賞を受賞しました。
さらに現在は、水不足だけでなく、さまざまな自然災害に耐えうるガーデンに注目が集まり、ナチュラリスティックガーデンのブームにつながっています。
日本の気象災害というと、夏の猛暑と豪雨が代表的ですが、昨今は干ばつの心配もあります。例えば前述の「The M&G Garden」のような庭は、水が溜まりやすい構造をしているため、多湿の日本には向いていません。
そこで吉谷さんは、盛り土やレイズドベッドで水はけをよくするなど、日本で植物が生きていける環境をデザインに落とし込んだデザインを考案しています。東京パークガーデンアワードのモデルガーデン「クラウド」がよい例といえます。
ドライガーデンは、水不足の中でいかに庭を存続させるか、という環境問題から始まりましたが、その本質は「厳しい環境に適した植物で、いかに美しい植物の庭をつくるか」という点にあるのかもしれません。
2社によるドライガーデンの事例をご紹介
そのほか、本特集では、日本庭園の世界観を取り入れた“NEO DRY GARDEN”を追求する「BOHEMIANS」(株式会社BOB/g.d.o)の菊地亮さんに、和風テイストにドライガーデンを加えた独自の外構・植栽の解説を、そして、ユッカロストラータやアガベを中心に、ドライガーデンに使われる植物を扱うRYU PLANTS NETWORK代表の桧野竜治さんに、日本のドライガーデンを楽しむために必要な要素について、お話を伺っています。
業界の最新情報が盛りだくさんの『グリーン情報』
このほか、『グリーン情報』9月号では、特集「遊べる・学べる 都市の緑地」として6月に開幕した都市緑化仙台フェアからみるこれからの都市緑化の在り方、園芸店紹介として栃木県宇都宮市の「とちぎ園芸」、生産者紹介として愛知県春日井市の「H&Lプランテーション春日井農場」をご紹介しています。また、エクステリアガーデンの現場で働く専門家によるハウツー・事例紹介、業界最新ニュース、学べるクイズコーナーなど、園芸・ガーデニング業界の幅広く深い情報が満載。ぜひお手にとってご覧ください。
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