父が亡くなり、母は一人暮らし。頻繁に様子を見に行ける距離に住んでいるわけではないし……不安。また母も心細さを感じているなら、「老人ホーム」は有力な選択肢です。ただ「老人ホームに入れば安心」とはいえなくなってきているといいます。果たして、何が起きているのでしょうか。
(※写真はイメージです/PIXTA)

1人暮らしや夫婦2人暮らしの高齢者…介護が必要になったら

厚生労働省『令和4年 国民生活基礎調査』によると、「高齢者世帯(65歳以上の人がいる世帯)」は2,747万世帯と全世帯の過半数を占め、そのうち高齢者だけの世帯は6割を超えています。また1人暮らしの高齢者と夫婦2人暮らしの高齢者はそれぞれ900万世帯に迫る勢いで、今後も増えていくといわれています。

【高齢者世帯の実情】

●65歳以上の人がいる世帯…2,747.4万世帯(全世帯の50.6%)

〈内訳〉

・1人暮らしの高齢者世帯…873.0万世帯

・夫婦2人暮らしの高齢者世帯…882.1万世帯

・親と未婚の子の高齢者世帯…551.4万世帯

・親・子・孫の3世代世帯…194.7万世帯

・その他の世帯…246.3万世帯

●65歳以上の人だけの世帯…1,691.5万世帯

年を重ねていくと不安が増していくのが「介護」。主な介護者についてみていくと、最も多いのが「同居している配偶者」で22.9%。「同居している子」16.2%、「別居の家族等」11.8%、「子の配偶者」5.4%。介護サービスが主となっているのは15.7%です。日本の夫婦の構造から鑑みると、「年上の夫」の介護を「年下の妻」が行い、夫の逝去後、母(妻)の介護を子どもたちが行う……という流れが一般的なのでしょうか。

ただ1人暮らしや夫婦2人暮らしの高齢者が増えているなか、夫を亡くした妻(母)が要介護となったとき、子どもがサポートできる環境にないケースは多く、そうなると「介護サービス」を頼るしか方法はありません。しかし子どもとしては「高齢の母の1人暮らしは不安」と思うでしょうし、高齢の母も「一人暮らしは心細い」と思うこともあるでしょう。

そうなると「老人ホーム」への入居が視野に入ります。昨今、特別養護老人ホーム(特養)の定員数は増えているものの、ニーズの増加に追いついてなく、1年以上の退去待ちも当たり前という状況。そこで特養よりは高額となりますが、民間が運営する有料老人ホームなどが有力な選択肢となるでしょう。

有料老人ホームへの入居に際し、気になるのはその費用。まず初期費用として入居一時金。施設によってピンキリで、最上級の施設となると億単位となりますが、平均は100万~300万円程度。そして月額費用は介護度で変わりますが平均15万~30万円程度で、さらに月額費用外のものとして月2万~3万円程度かかるというのが一般的です。

遺族年金の平均額は月8万円程度なので、夫を亡くした妻(母)自身の国民年金と合わせると、平均月14万円程度の年金収入があると考えられます。一時金は貯蓄から、月額費用はベースは年金で、足りない分は貯蓄でまかなう……現状の貯蓄額から逆算して現実的な予算感の施設から自身の介護度や志向に合わせて施設を選んでいくことになります。