2024年1月10日
【ntv】
1月1日に発生した能登半島地震ついて研究されており、広島大学で活断層を研究されている後藤秀昭准教授にお話を伺います。
地震のメカニズムについて
Q.「広島でも同様の地震が起きる可能性があるのか」という点を中心にお伝えしていこうと思うんですけれども、改めて今回の地震のメカニズムから教えてください。
■広島大学 後藤秀昭准教授
地震は断層運動によって起こります。今回の地震は、活断層が引き起こしたと考えています。
Q.2つのメカニズムがあるということですけれども。
■広島大学 後藤秀昭准教授
「海溝型」というものと「活断層による地震」という2つのタイプがあります。「海溝型」の方は、東日本大震災を引き起こしたような断層です。もう1つは「活断層」ですけども、阪神淡路大震災や熊本地震を引き起こした断層運動になります。
能登半島の断層
Q.今回が「活断層による地震」に当たるということで、活断層というのを見ていこうと思います。
■広島大学 後藤秀昭准教授
紫色で示したのが活断層で、斜めにいくつも延びているかと思います。能登半島辺りを見ていただくと、半島の海岸からすぐ近いところに、斜めに延びてるのが分かります。この断層が動いて地盤が隆起をして、それが活断層ですから、繰り返し動くことによって、能登半島ができてきたというわけです。
Q.断層が近いので、今回の津波が非常に早く来たというのは、そこも関係ありますか。
■広島大学 後藤秀昭准教授
はい。断層が近いというのは、津波の伝搬(伝わる速度)が速くなってくるということです。
Q.そして、この地域には2020年から地震が多発していたというようなデータがありました。
■広島大学 後藤秀昭准教授
はい。短期間でそれだけくさんの地震が起こるというのは、非常に珍しい現象だと思います。
広島県周辺にある活断層について
Q.地震を引き起こす活断層が、広島県の周辺にもあるということですよね。
■広島大学 後藤秀昭准教授
はい。中国地方の活断層の分布を示したものを見ると、中国地方の西部に割と活断層が多いんですけども、広島県辺りだと福山とかにもありますが、西部の広島市周辺から山口にかけて、斜めに延びるたくさんの断層が分布しています。
Q.福山の方にも、北部の方にもありますけれども、やはり広島県西部にたくさん断層が多くなっているというのが目立ちますよね。
■広島大学 後藤秀昭准教授
そうですね。広島辺りには多くの断層が延びております。
Q.広島県西部の活断層を取り上げます。
■広島大学 後藤秀昭准教授
広島市から岩国を通って、周南の方に向かっている「岩国ー五日市断層帯」と非常に長いものが延びております。全長約78kmというものです。
Q.長ければ長いほど地震の強さというのは、いかがでしょう。
■広島大学 後藤秀昭准教授
地震の規模は、マグニチュードで表示されておりますが、断層の大きさがマグニチュードの大きさに比例しますので、断層長いですから、非常に大きなマグニチュードになろうかと思います。
Q.地震後経過率という数字についてもお願いします。
■広島大学 後藤秀昭准教授
1000年間隔で繰り返し繰り返し動くのが活断層です。もし、1000年間隔で動いてて、最後に1000年前に動いてれば、地震後経過率「1」という数字になります。ですから「1」になると、そろそろ地震が起こるという数字になるわけです。この辺りだと「0.6から1.2」ということで、かなり差し迫っているという数字と言えます。
Q.少し幅のある数字にも見えますけれど、もう差し迫ってる状況ではあると。
■広島大学 後藤秀昭准教授
地質の情報からなので誤差が大きいんですけど、断層も決まった間隔というのが、多少前後することもありますので、差し迫ってると言えると思います。
断層をインターネットで確認
断層図などは、インターネットでも調べられます。インターネットの検索窓のところで、「活断層データベース」と入力すると、「活断層データベース」の画面にたどりつきます。そして、ページの左側にある「起震断層・活動セグメント検索」というボタンをクリックすると、地図が開きます。
Q.全国的にも本当にたくさんの断層があると、この図からも見て取れますよね。
■広島大学 後藤秀昭准教授
はい。中国地方はそれほど多くはないんですけども、西部に多くて、広島周辺にはたくさんの赤い線が引かれています。
Q.広島周辺を拡大すると、太田川の西側に赤いラインがありますが、これが広島周辺の断層ということでよろしいですか。
■広島大学 後藤秀昭准教授
はい。「己斐断層」とか「五日市断層」と呼ばれるような、北から北東、南西方向に延びる斜めの線がたくさんあるかと思います。
Q.いくつか赤い線が見られますが、線の太さや位置から読み取れること、また検索する上で注意をしていく必要があること、どういったことがあげられますか。
■広島大学 後藤秀昭准教授
断層そのものは非常に幅の狭いものなんですけども、その場所を詳しく特定するのは難しい仕事で、この地図では、やや概略的な線が引かれていると理解していただきたいと思います。
Q.広島の地形から注意しないといけないこととして、どういったことが考えられますか。
■広島大学 後藤秀昭准教授
広島の平野があるところは、過去数千年に溜まった、非常に若い軟弱な地層です。まだ十分に固まっていない地層なんですね。ですから、地震が起こると非常によく揺れる、長く揺れると、そんな地盤条件のところになります。
Q.活断層の真上でなくても注意をしておく必要があるということですよね。
■広島大学 後藤秀昭准教授
そうですね。活断層の近くはもちろんよく揺れますけども、離れていても地盤によっては、大きな振動になるということです。
南海トラフ地震について
Q.もう1つ、「南海トラフ地震」の発生も懸念されるかと思いますけれども、こちらについていかがでしょう。
■広島大学 後藤秀昭准教授
南海トラフの地震は、過去の記録を見ると100年とか150年に1回、地震が起こっています。最後に起こった地震が1946年ですので、そろそろ次の地震が迫っているんではないかと危惧しています。
広島県で言いますと、今後30年でほぼ全域で震度5弱以上に見舞われるという予測もあります。
<視聴者からの質問>
Q.南海トラフ地震はいつ起こりますか?これからも日本では頻繁に大地震が起こりますか?
■広島大学 後藤秀昭准教授
そのことについて皆さん知りたいと思うんですけど、結構予測するのは非常に難しいですが、プレートの境界については、境界の地震が起こる前後に、日本列島全体で大きな地震が起こってきたという過去の記録がありますので、差し迫っている南海トラフ地震ですので、日本列島まだまだ揺れるのではないかと思います。
Q.南海トラフ地震での瀬戸内海に予想される津波について、どの程度の津波が来るのでしょうか?
■広島大学 後藤秀昭准教授
過去の記録から見てみると、2mぐらいのものが記録されています。実際にどのような浸水状況になるかということについては、広島県の防災ウェブの「津波ポータルサイト」や「重ねるハザードマップ」などで、具体的に想像、想定していただければと思います。
【テレビ派 2024年1月9日放送】