【gardenstory】
2024.01.20
「育てたい花だけを育てたい」。当たり前のようでいて、それを叶わぬ夢にしている雑草。庭を楽しみたいと思う人に苦痛を与える雑草取りのストレスをなくし、植物の植え込みや植え替えなど、ガーデニングの楽しいことにだけ専念できる新しい庭づくりの工法が「ノンストレスガーデン工法」です。造園・設計施工の「かたくり工房」が開発したこの工法の手順について、開発者が詳しく解説します。
目次
雑草との戦いから解放する「ノンストレスガーデン工法」
季節ごとに移り変わる美しい花々を眺めて暮らせたら素敵! と多くの人が思うものです。しかし、いざガーデニングを始めてみたら、好んで植えた花以上に、勝手に生えてくる雑草に手をわずらわされ、「こんなはずじゃなかった…」と思っている人は少なくありません。
「育てたい花だけを育てたい」というごく当たり前でのようでいて、これまで叶わなかった夢をついに実現化したのが、かたくり工房が開発した「ノンストレスガーデン工法」。雑草取りから解放されるだけでなく、+アルファのメリットがある画期的なガーデン工法です。
ノンストレスガーデン工法の3つのメリット
1 草取りをしなくていい!
2 育てたい植物の生育を促進!
3 育てたい植物の病気予防が期待できる!
かたくり工房所属の造園家、阿部容子さんは、「ノンストレスガーデン工法は、年齢とともに庭づくりの体力がなくなり、草の世話ができないとお客さんから相談されたことがきっかけです」と話します。なんとか労力を少なく、大好きな花を育てることを今まで通り楽しんでほしいと生み出したノンストレスガーデン工法ですが、今では個人邸はもちろん、公共の公園など全国からノンストレスガーデン工法の依頼があります。実際にかたくり工房がノンストレスガーデン工法で施工したバラ園は、それまで草取りにかけていたメンテナンス費が1/10にまで削減され、主役であるバラの手入れにより力が入れられるようになりました。
ノンストレスガーデン工法のSTEP
この工法が正しく広がり、もっと手軽に緑を楽しめる人が増えてほしいと願う阿部さん。この工法について詳しく解説してくれました。
【ノンストレスガーデン工法に必要な主な資材】
- カラー防草シート(植栽シート)/防草効果の高い高密度の不織布製で厚さ0.45mm程度のもの。あまり分厚いものだと扱いにくいです。色は土壌色となじむブラウン色がおすすめ。
- ノンストレスガーデン工法用土壌資材(以下工法解説Step3に詳細)
- ノンストレスガーデン工法専用植栽リング(*ガーデンストーリーで取り扱い)
- 防草シート用強力ガムテープ(なるべく強度の高いもの)
- モルタル
- バークか砂利(防草シートを隠すためのマルチング材)
- その他の道具/チョーク、カッター、ハサミ、スコップなど
【ノンストレスガーデン工法(土壌の下準備編)】
Step1 除草をする
●植栽しようと思っているエリアに雑草が多く生える場合は、除草剤を用いて除草します。特にスギナなど地下茎で増える雑草がある場合は除草剤を用いるのが効果的です。枯れた雑草はいったん取り除き、土の中に草を混ぜないようにします。
●宿根草など必要な植物がすでに植わっている場合は、それらを移植し別の場所に仮植えしてから除草します。宿根草は根が本格的に動き出す前の3月くらいまでは移植が可能です。
●樹木など移植が難しいものがある場合は、樹木から1m以上離して(大木の場合は上部の枝の広がり以上離して)除草剤を使います。樹木がたくさん植わっていて1m以上離せない場合は、除草剤は使わず手で除草します。
●新築の敷地の場合、敷地内に使われている土の中には発芽前の雑草のタネが含まれていることが多いので、発芽を抑制する効果のある除草剤を用います。
<除草剤の選び方&参考商品>
除草剤は商品によって効果の持続期間が2週間〜1年と大きく異なるので、植栽までの期間を計画的に考え、適したものを用いて除草します。また、除草剤には液剤や粒剤がありますが、液剤のほうがムラなく満べんなくまきやすいです。
●「グリーンスキットシャワー」/草花の周りで使用可能。1〜2週間で雑草が枯れた後すぐ、新たに植物が植栽できる。液剤でまんべんなくまくことができる。
●「草退治メガロングFL」/スギナ・ドクダミ・ススキ・ササ・ゼニゴケなどの枯れにくい雑草を退治し、発芽抑制効果もある。ただし、効き目は8カ月残るので、植栽時期を計画的に。液剤でまんべんなくまくことができる。
Step2 排水勾配をつける
土壌を整地します。傾斜があると後から用いるマルチング材が流れるため、なるべくフラットにしてから、排水勾配を1%つけます(水平器を用います)。排水勾配1%とは敷地外の排水方向に向かって1mで1cm低くなるように傾斜をつけることで、歩道もそのように作られています。見た目も歩いた感じも傾斜があるようには感じられませんが、庭の環境を健全に維持するのに必須です。排水勾配がないと雨水が庭にいつまでも溜まってしまうため、植栽した植物が根腐れしてうまく育たないばかりか、家を傷めたり、健康被害をもたらすこともあります。
Step3 土壌改良
植栽エリア内の土壌改良をします。ノンストレスガーデン工法の土作りでは、有機物をあまり含まない土壌資材を用います。有機物はいずれ分解されてなくなり、シートが徐々に沈んできてしまうためです。前のステップで除草した雑草は有機物になるため、土の中に混ぜないようにします。以下の配合は団粒構造が壊れにくく、シートの浮き沈みが少ない配合です。植物の生育に必要な養分は植栽後にシートの上から与えます。
【ノンストレスガーデン工法用土壌資材】
- パーライト 14ℓ
- バーミキュライト 14ℓ
- 燻炭 8ℓ
- 牛フン 4ℓ
- ダイアジノン(コガネムシの幼虫などのネキリムシ用殺虫剤) 規定用法量
上記計40ℓを、1㎡に深さ20〜30cmで敷き詰めます。
【ノンストレスガーデン工法(シートの敷き方編)】
Step1 構造物をつくる
敷地の境界線になっているブロック(自身の敷地専用か共有ブロック)に防草シートをモルタルで固定していきますが、共有ではない場合は、境界線のブロックから3cmセットバックして構造物を新たに設けます。シートを留めつけるためなので、高さは5cmあればOKです。
Step2 防草シートを広げる
防草シートを庭に広げます。庭の外周方向のシートの端は20cm程度余裕を持って配置します。この20cmは、①モルタルとののりしろ ②つっぱり防止のためにややふくらみを持たせるためです。このふくらみがないと、人が歩いた時の重みでシートが沈んで引っ張られ、シートが破れたり、引き抜けたりする可能性があるためです。また、温度でシートが伸び縮みするので余裕を持たせる目的もあります。
シートは細長いロール状になっており、複数枚をつなぎ合わせながら敷くことになります。シートとシートのつなぎ目は10cmほど重ねて、つなぎ目を防草シート用強力ガムテープで隙間がないようぴったり張り合わせます。つなぎ目に隙間が空いていると、強風であおられシートがはがれることがあります。防草シート用のピンのみだと隙間ができるため、ピンは仮止めとして用い、最終的にはガムテープでしっかり止めつけます。
Step3 防草シートの端処理
庭の中に花壇の縁や敷石などの構図物がある場合は、シートの端を構造物に沿ってカットします。シートの端から2cmほどのところに、シート端と平行するように、ハサミやカッターで長さ10cmほどの切り込み(青のハサミ印)を入れます。モルタルで留めつける際、この切り込みの中にもモルタルを入れ込みながら接着すると、モルタルがフックのようにシートを止めつけ、複雑な形の箇所でも固定強度が高まります。カーブした箇所では赤のハサミ印のようにシートに縦に切り込みを入れると、カーブにフィットさせることができます。*直線箇所では、赤のハサミの箇所に切り込みを入れる必要はありません。
Step4 シートを止めつける構造物の端を掘り下げる
防草シートを止めつけるレンガなどの構造物の際(きわ)を、5cm程度の深さに掘り下げます。
シートと構造物をモルタルで接着します。その際、シート端と平行する横の切り込みの中にもモルタルを詰めこむのがポイント。
【ノンストレスガーデン工法(植栽編)】
Step1 植栽箇所にリングを当てて印をつける
どこに何を植えるのかあらかじめ決めておき、シートの上にチョークで植栽ポイントを記していきます。宿根草の植栽場所には「ノンストレスガーデン工法専用植栽リング」を当ててチョークでリングをなぞります。
*ノンストレスガーデン工法専用植栽リングとは
防草シートの上から宿根草や小型の低木類を植栽するために開発した円形状のプラスチック製リングです。植物の根張りや給排水が正常に行われ、シートの抑えとして機能し、バークで隠れる仕様になっています。防草シートとの併用で植物が健全に育つよう開発された専用アイテムですので、ノンストレスガーデン工法ではこの専用植栽リングを用いることを推奨します。植穴をリングでしっかり抑えないと、風にあおられシート全体がめくれ上がってしまうことがあります。
サイズは6号(直径18cm)と8号(直径24cm)の2サイズがあるので、最終的に植物が生育する大きさや生育に従い変化する株元の形状に合わせて、どちらかを選んで使います。株元の形状が1本立ちで生育するタイプは6号サイズ、株元から複数茎が立ち上がって株立ちになるタイプは8号サイズがおすすめです。(植物については続編でも詳しく解説します)
宿根草以外の樹木や一年草のエリアはチョークで植栽エリアのラインを描きます。一年草は植え替えや花がら摘みなどの作業がしやすいように、たいていは花壇の手前に配置するといいでしょう。
Step2 植え込み穴を開け植栽
チョークで記した部分をカッターで切り取ります。植栽リングをギュッとはめ込みシートをしっかり押さえます。植え込み穴の土を苗の根鉢の大きさ程度堀りあげ、リングの中に苗を植え込みます。
バラや樹木の植栽エリアはカッターで十字に切り込みを入れ、中央に植栽した後、切り込みに強力ガムテープを貼って留めます。
リシマキア、タイムなどのグラウンドカバー類の苗(3号ポットサイズ)を植栽する場合には、10〜12cmの円をカッターで開けて植栽します。グラウンドカバー類は横に広がり地面を覆い、それ自体が押さえとして機能します。
一年草のエリアはシートをカットし、端を樹脂エッジで押さえ、樹脂エッジと防草シートを強力ガムテープで留めます。その後一年草を植栽します。
Step3 マルチング
植栽後は穴の中にたっぷり水やりをし、防草シート部分はバークや砂利などでマルチングをして防草シートを隠します。防草シートは紫外線によって劣化が早まるので、必ず覆います。バークは堆肥に近いバークチップを敷くと雨水によって防草シートの中に養分が染み込んで植物の生育をサポートしてくれます。砂利をマルチングとして用いる場合、夏に砂利が50℃以上になるため植栽エリアにはあまり向きません。砂利は通路など植栽をしない場所に向いています。
【ノンストレスガーデン工法(メンテナンス編)】
●水やり
初年度の水やりには注意が必要です。植栽した穴の中を意識してたっぷり水を与えます。ホースで全体的に水まきをしていると、植物に水が届いていない場合があります。また、ちょっとした雨では植物に十分行き渡ってないことが多いので、初年度は乾きに注意します。可能なら自動冠水装置があると楽です。自動冠水装置の設定は朝1回(AM5時)にしてたっぷり目に。足りない場合は夕方に手冠水で水分をプラスします。2年目以降は極端に雨が降らない場合を除き、自然の降雨に任せてOKです。
●肥料
植栽の穴の中に各植物の適期に肥料を施します。バラや樹木の箇所は、一度マルチングをどけて、ガムテープをはがして与えます。メネデール社の「バイオマイスター」をマルチングとして用いている場合は、防草シートの上から全体的にバイオマイスターを施すだけでOKです。バイオマイスターは防草シートの上から肥料成分を植物に届けることができ、マルチング材としても活躍する土壌資材です。
●マルチング
バークチップ(またはバイオマイスター)は分解されてなくなっていくため、減ってきたら植物の葉が少なくなる冬期に足します。
草取りから解放されれば、広い庭も体力のない人も、時間がない人も、美しい庭のある暮らしが叶います。この工法についてご質問のある方(プロ)は、ガーデンストーリーinfo(https://gardenstory.jp/contact)までお問い合わせください。次回はノンストレスガーデン工法で植栽する植物の使い方について解説します。