【日経新聞】国連総会、143カ国がパレスチナ加盟支持 権利拡大を採択
2024年5月11日
【ニューヨーク=佐藤璃子】国連総会は10日の緊急特別会合で、パレスチナの国連加盟を支持する決議案を採択した。国連安全保障理事会にパレスチナの国連加盟の再検討を求め、国連におけるパレスチナの権利拡大を認める。採択に必要な3分の2以上にあたる143カ国が賛成した。米国やイスラエルなど9カ国は反対し、国際社会からの孤立を色濃く映す格好となった。
安保理は4月、常任理事国でイスラエルの後ろ盾となっている米国の拒否権行使によりパレスチナの正式加盟を国連総会に勧告する決議案を否決した。これをうけてアラブ首長国連邦(UAE)がアラブグループを代表し、安保理での再検討を呼びかける決議案を総会に提出した。77カ国が共同提案した。
「パレスチナは国連憲章の第4条に従って国連に加盟する資格を有しており、加盟が認められるべきである」と明記した。正式な加盟国となるには安保理が加盟を勧告したうえで、国連総会で加盟国(193カ国)の3分の2以上の賛成を得て承認される必要がある。
米国のウッド国連次席大使は投票後の演説で「安保理はパレスチナの加盟申請を取り上げるべきなのだろうか。また同じような結果になるだろう」とし、引き続き正式加盟に反対の立場をとることを明らかにした上で、再度安保理で審議をすることに懐疑的な見方を示した。安保理外交筋は「年末をメドに、安保理内で再検討する可能性がある」とみる。
一方、パレスチナの国連における権利拡大については、今回の決議採択で固まった。現在パレスチナは「オブザーバー国家」の位置づけにとどまるが、追加的な権利を得る。加盟国の中でアルファベット順に着席する権利や、提案や修正案を提出する権利、国連総会の委員会などで役員に選出される権利などだ。
決議は日本、中国、フランスを含む143カ国が賛成した。反対は米国やイスラエルなど9カ国のみだった。英国、ドイツなど25カ国は棄権した。
イスラエルのエルダン国連大使は「国連憲章を無視し、パレスチナに加盟国の特権を与えている」とし、安保理を通さず総会に地位向上の決議を持ち込んだことを非難した。
パレスチナのマンスール国連大使は投票前の演説で「賛成票は、パレスチナの存在を支持する票だ」と各国に支持を呼びかけた。イスラエルに対する抗議活動が起きている米名門校コロンビア大学でも、パレスチナの国旗が掲げられていると声を詰まらせながら語った。最後には「パレスチナに自由を」と繰り返し、会場から拍手がわき起こった。