【gentosha】
2024.03.27
人生100年時代、定年後の選択肢として、会社員時代の人脈とスキルを活かした「フリーランス」への注目が高まっています。ただし、フリーランスとして成功するには「また会いたいと思われる人」になることが重要です。『ただの人にならない「定年の壁」のこわしかた』(マガジンハウス)より、会社員のうちに身につけておきたい「デキる人の所作」をみていきましょう。著者で公認会計士の田中靖浩氏が解説します。
「相手の立場」になって考える精神を
これは、複数の不動産会社を経営する知人T社長から聞いた話です。
不動産の仕事は1件の金額が大きいため、商談相手を見定める目やどんな人物を入社させるかがとても重要。数多くの人と名刺交換するTさんは交換の瞬間、その人物とうまく付き合えるかどうかピンとくるそうです。「この人とはウマが合いそうだな」とか「この人とは仲良くなれそうにないな」と。
その直感はほとんど外れないのだとか。彼は名刺交換の瞬間、どこから気配を感じ取るのでしょう?
Tさんによれば、重要なのは「名刺を出す高さ」だそうです。
我々は無意識のうちに名刺の出し方について「自分のスタイル」をもっています。相手から受け取った名刺を名刺入れの上に置き、次にこちらの名刺を相手に差し出す、といった一連の手順。
たとえばときどき「妙に腰の低い」人がいます。低い位置から名刺を差し出す、これもその人の「低姿勢スタイル」です。Tさんいわく、多くの人は「自分のスタイル」に従って名刺を差し出すが、デキる人は「相手が受け取りやすい高さ」を微妙に調節して名刺を出すそうです。
ポイントは自分のスタイルとして「低く」出すのではなく、「相手に合わせて」高さを調節する気配りがあるかどうか。
自分のスタイルで出すのか、それとも相手が取りやすいように出すのか。何気ないルーチンに垣間見える「自分中心か、相手中心か」の姿勢。ありふれた日常の瞬間だからこそ、それがにじみ出てしまうのでしょう。これを聞いて「なるほどな」と感心しました。
「相手の身長の高さに合わせて名刺を出しましょう」という話ではありません。それでは遅すぎるのです。常日頃から「相手をよく見て合わせる」ことが無意識のうちにできるかどうか。すべてのビジネスシーンにおいて相手を尊重する姿勢で臨めているかどうか。それがたまたま名刺交換の瞬間に表れるというわけです。
ちなみにT社長は自身も「相手をよく見る」観察力、それに合わせて判断できる力に優れた人物です。だから相手のこともよく見えているのでしょう。
先日、T社長を某セミナーのゲスト講師に招いたのですが、そのときも「どんな参加者が来るんですか?」と根掘り葉掘り聞かれてめんどくさいのなんの(笑)。多くの講師が「自分が何を話すか」ばかり気にするなかで、彼は「お客さん」のことを気にしていました。
こうした「相手の立場に立つ」精神は、名刺づくりの段階から気を付けましょう。自分はどんな資格をもっているか、どんな仕事をしてきたか、などなど書き連ねた名刺からは、自らを声高に叫ぶ「自己中心的」なニオイが漂います。受け取る相手の立場に立って「また会いたいな」と思ってもらえる内容を考えましょう。