【TSS】
2023.4.20
地球環境に優しいカキの養殖を目指して呉市音戸町で実証実験が始まっています。海のゴミ問題の画期的な解決策となるのか、可能性をツイセキしました。
【五十川記者】
「牡蠣を養殖するいけすにやってきました。いま私が持っているのは養殖に使うパイプです。叩くと非常に硬いんですが海に溶ける新素材なんです。どれくらい長持ちするのかパイプを使った実証実験が行われています」
呉市音戸町で今年2月に始まった「プラスチックごみ」をださないカキ養殖の実証実験。
大阪市の化学製品メーカー「ダイセル」が広島県と共同で実用化に向け取り組んでいます。
「ついていますね汚れが・・・汚れというか表面に」
水中から引き揚げたのは「垂下連」と呼ばれる養殖用のワイヤー。
【ダイセル新規CA事業構築プロジェクト・樋口暁浩プロジェクト統括マネージャー】
「こういう石油系のプラスチックというのがどうしても生分解しないとかですね。燃やしてしまうと二酸化炭素が増えるという観点から我々の酢酸セルロースというのが80年くらい前から我々は製造しますけれども、もう1度こういう素材を置き換える意味では使えるだろうと」
「酢酸セルロース」は木材などから抽出した植物繊維と「酢酸」を組み合わせた自然由来の素材です。これまで広く使われてきたポリエチレン製のパイプと一緒に海に沈めて耐久性などを比較します。
生産量・日本一を誇る広島のカキ。
養殖では、大きく成長するよう貝殻の間隔を保つパイプが必要です。
しかし、ポリエチレン製の素材は台風などの自然災害で一度流されると分解されずに海を漂い、やがて漂着するのが現状です。
県の調査によると、2021年度は県内の海岸に、あわせておよそ48トンの漂着物が確認され、そのうち「9%」がカキの養殖用パイプでした。
海洋ゴミの削減を目指すうえでこの「酢酸セルロース」は流されても、形に残りにくいパイプとして期待されています。
【五十川記者】
「パイプを引き上げたんですけれども、真新しいパイプと比べても変わらないように感じます。付着物はあるんですけれども非常に硬さもありますししっかりとついていますね」
【県立総合技術研究所西部工業技術センター・田平公孝部長】
「ここまで企業さんと協力しながらやっていくというのは工業技術研究センターとしても初めての取り組みですので非常に興味深く、結果がどうなるのかというのは楽しみな実験ではあります」
「酢酸セルロース」がカキの養殖で使われるのは今回が初めて。
ストロー程度の大きさだと形が小さく1年ほどで海に溶けてしまうためカキが大きく育つ3年後まで持ちこたえることができるかが焦点です。
【ダイセル新規CA事業構築プロジェクト・樋口暁浩プロジェクト統括マネージャー】
「この材料がしっかり2年後、3年後にもこの牡蠣パイプとして使えて生理分解もするというところできれいな海が保てて広島県のカキの新しいブランドにもなったら面白いかな」