自分の欠点とどう向き合えばいいのか。日本電産の永守重信会長は「周囲から評価されるためにとか、よく見られるようにといった理由で何かを抑えたり、変えたりする必要はない」という――。(第1回)

※本稿は、永守重信『人生をひらく』(PHP研究所)の一部を抜粋・再編集したものです。

仕事も人間も「原点」を変えてはいけない

仕事という点において一番よくないのは、根っこが変わってしまうことだと私は考えています。

たとえば、日本電産でモーターの仕事を10年やった人が、突然畑違いの会社に行ったとしたら、根っこから何からすべて変わってしまう。これまでモーターを10年やって、何台もモーターの設計をしてきたことがまったく活かされないという意味では、10年が無駄になってしまうのではないでしょうか。

それは会社でも同じで、回るもの、動くもの、それに関する部品・製品・応用製品というように、日本電産としてはこれからもいろいろな事業をやっていきますが、その原点は変わりませんし、変わってはいけない。

では、人間はどうでしょうか?

人間は「饅頭」と一緒

先日、株主や投資家への説明会でアナリストに対して大きな声を出したということで、「相変わらず、人間ができていませんな」という内容のメールをたくさんいただきました。ただ、私は変わるつもりはありません。

日本電産の永守重信会長

日本電産の永守重信会長

私はそのときは本気で真剣に怒っていました。真剣に怒っているにもかかわらず、周囲から評価されるためにとか、よく見られるようにといった理由で何かを抑えたり、変えたりするつもりはまったくありません。そんなことをしたら、この会社の成長はぴたりと止まってしまうでしょう。

たしかに、見ようによっては、これは私の欠点かもしれません。ただ、人間は饅頭と一緒だとも思うのです。砂糖がたっぷり使われた饅頭はおいしいに違いありませんが、砂糖ばかりの饅頭は1個ならまだしも、2個、3個、4個、5個と食べようと思ったら、塩味がないと無理でしょう。砂糖だけの饅頭、砂糖だけのおはぎというのは、食べられてせいぜい1個か2個。もっとたくさん食べたいなら、塩を塩梅よく入れないといけない。

人間も饅頭と一緒で、必ず欠点がないといけない。いい点と悪い点が交ざり合っているのが個性であって、いい点ばかりにする必要はないのです。