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【TSS】オオサンショウウオが絶滅の危機 葛藤を抱え「異変」に立ち上がった研究者 広島/2023.2.14

【TSS】

2023.2.14

人の手によって持ち込まれた外来生物が、いま特別天然記念物を絶滅の危機に追い込んでいます。この状況に立ち上がった研究者の奮闘を追いました。

東広島市を流れる清流・椋梨川。
去年9月、ある生き物の調査が行われていました。
清流の主と呼ばれるオオサンショウウオです。
この川で、長年調査を行っているのが広島大学の研究者清水則雄さんです。
オオサンショウウオを捕まえて、いまだ謎の多いその生態を調べています。

【広島大学総合博物館・清水則雄准教授】
「圧倒的な存在感。細い川でこんなに大きいのがいました。あれは本当にびっくりしました」

まるで少年のように眼を輝かせ夢中で住みかを探します。

この日、清水さんが向かったのは広島市佐伯区の八幡川。オオサンショウウオに起きたある「異変」を調査します。
見つかったのは通常の個体と比べ色や大きさが異なるオオサンショウウオ。

【広島大学総合博物館・清水則雄准教授】
「交雑種がとれるのは複雑ですね」

交雑種とは中国からかつて輸入されたオオサンショウウオと「元々日本いた在来種」との間に生まれた個体のことです。
県内では去年初めて確認され、清水さんは、この状況に危機感を抱いています。

【広島大学総合博物館・清水則雄准教授】
「在来のオオサンショウウオは(交雑種に)エサを奪われている巣穴も得ることができなくなっている。これが進んでいくと100年200年後には西日本全域のオオサンショウウオが消滅する可能性がある」

交雑種の生息地が広がる理由。
それは、川の護岸工事などでオオサンショウウオを見つけた人が他の川に移している可能性があると言います。

これは2300万年前、ヨーロッパで生息していたオオサンショウウオの化石です。
人類が誕生する遥か昔からほとんど姿を変えていないオオサンショウウオ。
しかし、今、人間の手によって短期間に姿を消そうとしています。
自然界のスピードをはるかに上回るその変化が生き物の生態系に大きな影響を与えています。

【広島大学総合博物館・清水則雄准教授】
「オオサンショウウオのエサはカワムツ、サワガ二。普通のオオサンショウウオが食べる量より交雑種は多く食べる。カワムツ、サワガ二はいなくなる。カワムツ、サワガ二が食べていたエサは食べる生き物がいなくなったので増える。その下の生き物がたくさん食べられてしまう。
人間も生態系の中に位置する生き物。我々が立つピラミッドが崩れてしまったらどうなりますか? 生きていけない」

交雑種のさらなる繁殖を防ぐため、発見された個体は現在、隔離されています。
しかし、隔離するのに必要な水槽はすでにいっぱいで、施設の整備が今後の課題となっています。
清水さんたち研究者は交雑種を発見してもそのまま放流せざるをえないといいます。

【広島大学総合博物館・清水則雄准教授】
「1回捕まえていますので捕まえるのに労力も相当かかっている。2度と捕まえられない可能性もあるので本当は放流したくない」

生き物に正面から向き合う清水さん。そのきっかけは学生時代にさかのぼります。
大学院の頃、魚の研究をするため、鹿児島県の口永良部島に7年間移住しました。
手つかずの自然が残るこの地で清水さんの生き物に対する向き合い方は大きく変わりました。

【広島大学総合博物館・清水則雄准教授】
「島の人は島の魚をたくさん釣ります。潜って突きますし、とります。店がないですから自分たちが生きていくためにはとらないといけない。でも食べる最小限の量をとる。すごく大きな魚もいるが食べないならとらない。トビウオが網にかかりすぎたら漁師は島の人全員に配る。勿体ないから皆で分かち合おう。すごく命を大切にしている。それは生きていくために必要だから」

季節は冬へ。東広島市の山間部で自然の恵みを受けて暮らしている清水さん。
この日、一人息子の雄貴君と一緒に山の中へ向かいます。

(イノシシ発見)
「しゃがんでこっち向いています」

清水さんが仕掛けた罠にイノシシがかかっていました。
(イノシシ捕獲)畑を荒らし、人間に危害を加えるイノシシ。被害を減らすために駆除されています。
しかし、イノシシと保護されるオオサンショウウオの命の重さに差はありません。
清水さんは葛藤を抱えながら命と向き合っています。

【広島大学総合博物館・清水則雄准教授】
「同じ一つの命ですから、そこをどう扱うのかは人間が考えていかないといけない。難しい問題だと思います」

清水さんは自宅に戻り、捕まえたイノシシをさばいていきます。
捕まえた生き物を余すことなく食べ、その命に感謝する。島の住民の教えは清水さんの心に今も息づいています。

【広島大学総合博物館・清水則雄准教授】
「駆除対象で殺さざるをえない生き物はそのまま捨てられていいのか。命をとってしまったら食べることがせめてもの償いになる。我々は感謝して生きていかなればならない」

この日、清水さんはオオサンショウウオの現状を伝える講演会を開きました。
イノシシと同様に今後、駆除されるかもしれないオオサンショウウオの交雑種。
清水さんは一つの答えを出しました。

【広島大学総合博物館・清水則雄准教授】
「ただ殺すだけはかわいそう。殺すならやはり食べる。人間のルールだと思います」

被害をもたらす生き物を今後、どのように扱っていくのか。人間が引き起こした深刻な問題に目を向けてもらおうと、きょうも清水さんは命の大切さを伝えています。

<スタジオ>
清水さんは在来種を守るためには今後交雑種を処分するべきだと訴える。また、食べ物を食べるときには生き物に感謝してほしいと訴える。


 

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