一生懸命プレゼンや講義をしているのに、聞いている人たちがつまらなさそう。一生懸命なのは分かるけど、話が面白くないと言われる……そんな悩みを聞くことがあります。逆に、話をしていると「それで?」と相手が食いついて前のめりに聞いてくるような、トーク上手な人もいます。相手が熱心に話を聞いてくれる人とそうでない人とは、何が違うのでしょうか? 書籍『頭のいい人の対人関係 誰とでも対等な関係を築く交渉術』の筆者が、その秘密を教えます。(教育コンテンツプロデューサー/株式会社士教育代表取締役 犬塚壮志)

一生懸命話しているのに、相手が熱心に聞いてくれない

「正確な情報を熱心に伝えているのに、営業トークになかなか興味を持ってもらえない」
「日頃から真面目に誠実に話しているのに、友達の話の食いつきが悪い。『それで、それで?』なんて前のめりに聞かれたことなんてほとんどない」
「社内の研修講師を引き受けて、すごく役に立つレジュメを作ったのに、講義中、参加者はみんな眠そうにしていて心が折れそうになった」

あなたはこうしたことで悩んだことはありませんか? また、あなたの周りに、一生懸命なのは分かるけど、可もなく不可もなく、どっちかといえば少し不可寄り……な人物評になってしまっている人はいませんか。「飲み会で隣の席になると、話していて退屈」「悪い人じゃないんだけど、当たり前のことしか言わないよね」なんて言われがちな人です。

あるいは、自分としては正しいことを分かりやすく話しているのに、相手が興味を持ってくれない、退屈そうだったという経験をしたことはないでしょうか?

私は以前、予備校講師をしていました。主に指導していたのは、化学。地味で分かりにくく、受験が終わったら使い道があまりないと思われがちな科目です。予備校に通っているすべての生徒が、受験勉強に前向きとは限りません。私の化学の講義に参加してはいるものの、うとうと寝ていたり、他の科目の内職をしていたりする生徒も珍しくありませんでした。

しかし、予備校講師の任務は、このような生徒にも自分の話に耳を傾けてもらい、勉強への意欲を高めること。やる気を出させ、成績をアップさせてこそ、生徒が集まる人気講師への道が開けるのです。

そういうわけで私は、なんとか目の前の相手の興味をひきつけ、やる気を出させるために、さまざまな試行錯誤をしました。丁寧なレジュメを用意したり、本来の自分のキャラクターとは異なる熱血講師風に授業をしてみたり、ミニテストの量を増やしてみたり……残念ながらほとんどは失敗に終わりましたが、試行錯誤の過程で「人の興味を惹きつける」ヒントをつかみました。

その後、認知科学や心理学をベースとした専門書や論文を読みあさり、頭のいい人がさりげなく人の興味関心を惹きつけ、相手を動かしている1つの方法論にたどりついたのです。