50代以降へのリスキリングは
“お荷物”対策で、本質的ではない

政府が音頭を取って、大企業を中心に進められているリスキリング(学び直し)には、二つのタイプがあるように思えます。定年が見えてきた年代を対象にしたケースと、全年代を対象にして、将来的に必要になるデジタル知識や外国語の習得を促すケースです。

まず前者のケースの話をしましょう。そもそも、なぜ定年間近の社員をわざわざ再教育するのかです。日本の終身雇用制にどっぷり漬かっていたこの年代は、その会社でしか通用しないスキルや世渡りを懸命に身につけることで出世の階段を上ってきました。その大部分は転職したら通用しなくなるものです。

小宮一慶・小宮コンサルタンツ代表小宮一慶
小宮コンサルタンツ代表

ここからは私の感覚なのですが、彼らは終身雇用制が崩壊しても、会社が何とかしてくれるだろうという思いが強いのではないでしょうか。ところが、今のほとんどの会社には“戦力外”の社員を遊ばせておく余裕などありません。

そこで言葉はきついですが、「解雇は難しい。かといって今の能力のまま残られても困る」ということで多少なりともパフォーマンスを上げてもらうためにリスキリングという名目で再教育をしているのでしょう。

言ってしまえば、本質的ではない“会社のお荷物”対策にすぎないわけです。リスキリングではありませんが、定年後をどう過ごすかの教育を行っている会社もあります。

しかし、リスキリングが本当に必要になるのは、後者の若い世代だと思っています。