(N)2023.10.16
アルゼンチンが没落したのはなぜという質問に大雑把に答えると
アルゼンチン没落の主な理由は、”ペロニズム(Peronism)”と呼ばれる「福祉ポピュリズム」の結果である。 ペロニズムの核心は、簡単に言えば、政府は国民が望むことを、ほとんど無償で施してくれるというものですが、このような一方的スタイルの人気迎合主義がアルゼンチンの悲劇を招いたともいわれています。
スペインの植民地(1516年-1810年)であったアルゼンチンは、解放戦争と内戦(1810年-1829年)を繰り返しながら、1880年から1929年までのアルゼンチンは「輸出大国」に位置づけられ、輸出景気によって世界でも10指に入る経済大国を誇っていました。
2023年現在のアルゼンチンは、極度のインフレに見舞われて、国民の生活は地域によっては困窮を極めています。
アルゼンチンの株価指数が昨年から高騰しているその理由は「ハイパーインフレ」による自国通貨の弱さにもあると言えます。
このことは他人事でなく、一つの政策を見誤るとどの国でも起こる現象です。
現在のアメリカの財政状況などを見るにつけ、そういった危機感を身近に感じます。
【NHK】
23.09.28
南米のアルゼンチンでは、2023年8月の消費者物価が前の年と比べ2.2倍も上昇し、約32年ぶりという記録的なインフレが経済に深刻な影響を与えています。なぜこれほどインフレが進んでしまったのでしょうか。
食品 2倍以上に値上がり
アルゼンチンの首都ブエノスアイレス。記録的な物価高は市民の生活を直撃しています。食料品や飲料の価格は、この1年で2倍以上、上がりました。
市内に住むエルナン・サントゥチさんは配達員の仕事をしていますが、食費を賄うのが精いっぱいだといいます。
エルナン・サントゥチさん
「(物価高で)給料はどんどん目減りする。食料を得るために働いている。生きるためだ。状況が早く安定してほしい」
止まらない通貨安
インフレの要因の一つが、輸入物価を押し上げる通貨安です。アルゼンチンの通貨ペソはインフレの影響でドルに対して大幅な下落が続いています。
街中の両替所では、価値が下がっていくペソを急いでドルに交換しようとする人が相次いでいます。
両替商
「1ドル500ペソだったのが、朝起きたら750ペソになっていた。皆、余ったペソは全部ドルに替える」
物価高は治安にも影響し、商店などでの略奪が起こるほど深刻な事態になっています。
FRBの利上げが背景に
なぜインフレが止まらないのか。背景にあるのが、アメリカのFRB=連邦準備制度理事会が2022年から始めた利上げです。ドル高が進んでペソの値下がりに拍車がかかったのです。
さらに記録的な干ばつで、主要な輸出品のトウモロコシなどの収穫量が大きく落ち込んだことも追い打ちをかけました。
専門家は、記録的な物価高はさらに悪化する危険性があると指摘しています。
エコノミスト マリーナ・ダルポジェットさん
「(経済成長の)すべてが失われ、財政黒字も貿易黒字もなくなってしまった。生産性が上がらないまま物価が上昇している」
「中央銀行廃止」唱える大統領選候補者 支持が急上昇
こうした中、23年10月に行われる大統領選挙の候補者で、下院議員で経済学者のハビエル・ミレイ氏が、急速に国民の支持を集めています。
ミレイ氏は、経済を安定化できない中央銀行を廃止し、強いドルを法定通貨にするといった過激な主張をしています。
ハビエル・ミレイ氏
「これまでと同じことをやっていたら、残されているのは悲惨な未来だ」
アルゼンチンの物価高が加速すると、日本が輸入している農作物の価格にも影響を与えかねないと指摘する専門家もいます。混迷が深まるアルゼンチン。人々の生活が苦しくなる中、経済の立て直しが急がれます。
(サンパウロ支局 木村隆介)
【2023年9月28日放送】